今回はIdentity Managerを使った「名寄せ」処理の実際を説明します。Identity ManagerはSunが一般企業向けに販売しているアイデンティティ管理のためのソフトウェア・パッケージです。
一般企業のアイデンティティ管理においては、個々の記録の持ち主を特定する「名寄せ」処理に付随して、その人に正しい権限を付与する処理も併せて行われます。例えば、ある職位以上の人が決裁権を持つという規則がある場合には、各自の職位属性に従って権限の付与と剥奪が「名寄せ」処理と同時に行われます。そのため、Identity Managerではこれらの処理を行う機能のことを「調整」機能と呼んでいます。各種システムの保存された個人に関するデータを照合することにより、本人を特定し、それに基づき適切な権限を付与するのが、企業向けのアイデンティティ管理製品の特徴です。「名寄せ」はその機能の一部として存在しています。
Identity Managerでは「相関規則」と「確認規則」を使って様々なシステムに散在する記録の持ち主の特定を行います。「相関規則」には、多くのシステムで管理されている、姓、名などの属性に基づき、個人を特定するための条件を記述します。企業では、この他にEMAILや従業員番号が良く使用されます。年金記録の場合は、氏名、性別および生年月日を使用しているそうです。「相関規則」を定める際に最も重要な点は、信頼できるデータを利用することです。企業の場合には、人事部で管理しているデータベースや、給与計算用のデータベースから直接データを取得できれば理想的ですが、情報の機密性から難しい場合もあります。
Identity Managerを使って「相関規則」をシステムに適用すると記録の持ち主が判ります。と、言えれば簡単ですが、実際には設定した規則が厳しすぎる場合には、持ち主がひとりも見つからない場合や、逆に緩過ぎる場合には、複数の候補(または、それらの候補が満たしている条件)が返されます。以下にそれぞれの場合について説明します。
1)ただひとりの持ち主が見つかった場合
人事担当者などに確認をとった上で、記録と本人との結びつけを行います。企業システムでは、通常は、個人に連絡をして確認するということまでは行いません。
年金記録の場合には、本人宛に「ねんきん得別便」という確認の通知を行うそうです。これは、最終的には全国民に送られますが、初めは結び付くかもしれない記録がある人を優先するとのことです。この際、結びつく可能性がある記録を明示的に示すのではなく、確認を促すことのみを行います。実際の記録の追加や修正は本人が申し出る必要があるそうです。この点は企業のシステムとは大きく異なります。
2)持ち主の候補が複数見つかった場合
「確認規則」を利用します。「確認規則」には、複数の候補者の中から持ち主を特定するために、「相関規則」よるも細かな条件を指定します。企業のシステムでは、上司等の組織に関する情報や入社日などが良く使われます。「確認規則」を分けずに「相関規則」の一部にしてしまうことも可能ですが、これらを分離することにより、それぞれの条件を細かに変更して候補者を絞り込むことが容易になります。また、多くの場合、「確認規則」には「相関規則」に含めると処理に時間がかかり過ぎる条件を含めます。
年金の場合には払い込み期間を「確認規則」として利用することが出来るかもしれません。 確認対象の記録に対応する期間に年金を納めていたという他の記録がある人は、候補者から除いても良いと思われます。
3)持ち主の候補が全く見つからなかった場合
より緩い条件を「確認規則」に設定します。使用したデータ自体に誤りがある可能性があるからです。氏名が一文字を除いて一致し、その他の条件が完全に一致する等の条件が考えられます。どの条件を緩めるのが良いかは、どの様なデータの誤りが多いかに依存するため、試行錯誤が必要になります。緩めすぎれば、多数の候補者が抽出されるため、「確認規則」での絞り込みが難しくなります。
実際には、上記の作業を「相関規則」と「確認規則」に設定する条件を細かに変更しつつ繰り返し行うことになります。それにより、持ち主を特定できる記録を徐々に増やして行くことが可能です。
「Sun Java System Identity Manager 7.0 の配備に関する技術概要」の第3章ではActive Directory, SecurIDおよびSolarisに保存されたアカウントを結びつける方法について説明しています。こちらも参考にして下さい。