Katsuya Tanaka - 田中克哉 のブログ

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20060815 2006年 8月 15日 火曜日

内部統制違反の可能性がある会計処理を未然に防ぐオペレーション
ちょっと、忙しいなと思っていたら、あっという間に時間が過ぎ、ずいぶん長い間更新できませんでした。
今日は前回の続き「内部統制違反の可能性がある会計処理その2」です。

例2:仮発注書の扱い


同じ1の例の中で出てくる仮発注書の扱いですが、相手企業も内部統制を強化してくる可能性もあり、そうなると今後は相手企業から仮発注書は出なくなる可能性もあります。
場合によっては有印私文書偽造の判断をする企業もありますので。

ちなみに、以前私は年間で億単位の発注をするある部門長でしたが、内部統制が強化され始めた頃に、私の秘書が持っていた、社判、部門長印、社判ではないが会社名の入った角印などはすべて没収され、それ以降は私の部門レベルではなく経理からの発注となりました。金額の承認権限があっても、発注権限は経理に移ったということです。
このことにより、いわゆるバーター取引をシステム的に排除することにしたわけです。

日本のどの業界でも、まだありますけれど、下記のような危ない取引を減らすことになるわけです。

営業が今度、受注する企業に対して、受注の見返りとして、
  • 海外イベントへのツアー主催を受注先の企業グループ会社にすべて切り替える
  • 広告会社を切り替えるとか
  • イベント担当会社を切り替える
などのバーター取引をすることを未然に防ぐわけですね。

特に日本企業の場合には
「営業が『努力、根性、汗』で製品を売っているのに、マーケティングは金を湯水のように使いやがって…、だから売上のためにマーケティングも協力しろ…」といった具合ですから。


さらには 私がいた会社の場合、本社の指導によりすべての取引先企業に対して、自社の公式な社判の印影、発注書のフォーマット、レターのフォーマット等が送付され「この印影およびフォーマットをつかっていない文書は受発注の行為とみなさないで欲しいし会社としてもなんらの責任を負わない、また発信文書に対してもなんらの権利義務関係を生じさせる効力はない」という趣旨の文書を発送しトラブルを事前回避する方向にもっていきました。



このあたりの扱いについてはITガバナンス協会 が出している
「IT CONTROL OBECTIVES FOR SOX の日本語版」
のシステムセキュリティの章に書かれた内容も関係してくると思います。
(以下引用)
P.67
(必要に応じて)双方の当事者はいずれも取引を否定できないことを担保する統制が存在し、取引の発送または受領の否認防止、発送と受領の証拠を提供するための統制が実施されている。

下請け保護法にも関連する項目があります。ですから大企業であれば発注側の経理サイドで、すでに統制が効いている場合もあると思います。


Posted by ka28_tnk ( 8月 15日 2006年, 03:09:04 午後 JST ) Permalink

20060626 2006年 6月 26日 月曜日

内部統制の違反の可能性がある会計処理

以前の内部統制違反になる事例(1)では、内部統制のゴールとその違反となるようなケースをあげて本来の目的みたいなものを再確認してみましたが、今回はさらに身近な例をあげて、何が問題で、会社は具体的に何をしなければならないのかを考えてみたいと思います。
以下にあげる例は以前私の勤めていた会社での統制あるいは私の知っている会社で行われていた統制がベースになっています。

例1:期をまたがった受注(架空売上のリスク)

A社の第3四半期である7-9月の受注を目指してX社に販売活動を行っていた。営業的には過去に販売実績もあり担当者同士が懇意の中であった。9月も終わりに近づいたとき、1億円程度のソフトウェア販売が見込めることになったが、X社の都合で
I. 実際の発注は10月以降の下半期予算で発注したい。
II.そのため、正式な社判のついた発注は10月以降になるが、9月末の時点で担当者名の発注書ならだせる。
III.固定資産の圧縮の指示がでているので、簡単に資産計上できない。従って、ハードソフトともに公式な納品は来年1月以降にしてほしい。

となりました。
この取引(1億円)を9月末に売上計上するか否か?

私が知っている範囲の外資系では上記の例では第3四半期に売上がたちません。正確に言うと昔は売上をたてていましたが、今では立てられない会社のほうが多いと思います。

この問題がどうSOXなどと結びついてくるかについて考えて見ましょう。

仮に第3四半期の売上目標はちょうどこの1億円を足すことにより、100%達成するとしましょう。当然のことながら四半期ベースの財務の数値をCEOクラスの人が「Quiet Period
を経た後に口外します。会社の業績は順風満帆、株価も順調でしょう。

さて、10月に入り、下半期の人事異動で突然X社の担当者が移動してしまったとしましょう。当然のことながらX社の前任者が担当していたことが正しく引き継がれるとは限りません。場合によっては前任者の担当者印での発注書はなんら効力がなく、プロジェクトそのものが稟議をあげるところから再出発する可能性もあります。
さらには 後任の担当者がいればまだ良いですが、リストラの嵐があれまくっていた頃は該当する人も部署もなくなってしまったということもありました。

この1億円の売上はどうなるでしょうか? 売上の回収見込みは立つでしょうか?

納品もしていない、もちろん、請求書も発行していない、しかも、正式な発注書もない。
なのに、売上を上げてしまった。
納品はおろか、請求書を発行していないのだから、貸倒引当できないかもしれません。
監査の人たちはどう判断するでしょう? 仮に査察が入ったらどういう判断をするでしょうか?

客観的には「存在しない注文を売上に計上した」つまり「虚偽の財務報告」をしたという判断をされる可能性を否定できません。

A社の営業は自分の会社の目標達成のため営業としての力を極限まで発揮して担当者の発注書をもらったのですが、結果として会社を危機に陥れることになりかねません。

これを防ごうと思ったら、何ができるでしょう。第1には売上計上ルールを厳しい方向へ変更するという内部統制でしょう。

たとえば、
  1. お客様からの注文書は「社判」がないと無効(あるいはEDIのみ有効)
  2. 納品が四半期以上先の場合には当期ではなく、来期の売上にまわす
あるいは私が以前いたある会社では
という恐ろしく厳しいルールを布いていました。

日本ももうすぐ四半期ベースの決算発表になるので、このケースに引っかかってくる会社は増えると思います。
いわゆる「期末の押し込み」が内部統制違反となる可能性は非常に大きい時代になったのではないかと思いますし、現に日本の企業でも押し込みを一切行わせない営業指導をしている会社もあります。

繰り返しになりますが、売上計上ルールとしての内部統制の強化やITシステム上での何らかのチェックあるいは記録が必要になるのはもちろん、このような事象での受発注行為はいけないという社内教育も必要になってくると思います。

Posted by ka28_tnk ( 6月 26日 2006年, 01:15:16 午後 JST ) Permalink

20060620 2006年 6月 20日 火曜日

内部統制の違反になる事例(2):人の振り見て我が振りなおせ


ミキモトが架空売り上げ、5年間で13億円計上

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060620i104.htm

売上ですから、チェックが甘かったではすまないですね。しかも、5年前からあったようですから、内部統制が全くなかったか、最近内部統制を行うようになって発覚したか… 真相はよくわかりませんが。

5年前にさかのぼって、帳簿直すんでしょうか?それとも、一発で?



Posted by ka28_tnk ( 6月 20日 2006年, 06:00:00 午後 JST ) Permalink

20060608 2006年 6月 08日 木曜日

内部統制の違反になる事例
前回の終わりに予告した「SOX法対策と内部統制を防ぐ仕組みの矛盾」を書こうかと思いましたが、その前に内部統制違反になるのはどういう事象かということを書いておきたいと思います。

「内部統制」そのものはCOSOのフレームワークのターゲットにあるように、以下の3点にフォーカスします。

ここで、頭に入れておいたほうが良い点は3点目の「関連法規の遵守(コンプライアンス)」です。
大きな意味での「内部統制」という概念では コンプライアンスは非常に重要な問題です。
しかし、SOX法対策という点ではこれだけ、経理や財務からちょっと離れているように見えてしまいます。ですから、人によってはSOX対策ではコンプライアンスは後回し、と勝手に解釈している人もいます。

直接的に財務につながらないので少し不思議に感じる人もいるかもしれませんが、実際のケースを想定すればなぜ、たとえ財務系に目が行きがちなSOXでもこの項目のプライオリティは下げられないのを理解できるのではないかと思います。

例1:贈賄
1994年におきたIBM アルゼンチンの対アルゼンチン国立銀行への贈賄事件


この事件は 下請け契約にまつわる契約金額を実際の額よりも高めに受発注し、浮いた金額で賄賂を捻出しています。さらに、この契約にまつわる取引に関する虚偽の書類をアメリカの証券取引委員会(SEC)に対して、提出していたため、アルゼンチン国内はもとより、SECからも罰金を言い渡されています。(この事件は当時非常に大きなニュースになりました)

このような事件が起きた場合、何が起きるでしょうか?発覚するタイミングによりますが
考えられるケースはつぎのようになるのではないでしょうか?

・受発注契約そのものが解除され「なかった」ことになる可能性がある
・「なかったこと」になると過去にさかのぼって売上の「減額=修正」が必要になる
・過去の売り上げを修正することをSECに「修正申告」する必要性があるかもしれない

そうです。実態としては「虚偽の申告」に近い形になってしまうわけです。

そうするとどうなるでしょう。
現在であれば、SECに対して修正申告をするあるいはその予告をすることになります。そのニュースが流れた瞬間に株価は(一時的かもしれませんが、)一気に下落します。
つまり、一般の人を含む投資家が不利益をこうむるわけです。

例2:架空の売上
日本では日常茶飯事的に起きていた事象です。(過去形にしてよいものかどうか疑問は残りますが)そのため、コンプライアンスが徹底していない企業では闇に葬られてしまうこともありますが、あえて、実例をあげると最近おきたNECの事例
があります。

なんと売上363億円、営業利益で93億円の架空の売買です。
NECのリリースにもあるように、たとえ子会社であっても連結決算対象であったため、財務諸表の修正申告の可能性を自ら示唆しています。
(NECの場合は自ら情報を積極的に公開することにより、それほどのダメージは受けていないように見えますが…)

この事件の場合、
・取引先と結託しているので、受発注関連書類は真のものらしい
・実際に売買代金等が支払われている
ので、発覚が遅れたとされていますが、会社としては(あるいは財務報告書にサインする経営者としては)何とかこのようなことを防ぎたいと思うでしょうし、内部統制で何とか防ぎたいと思うのではないでしょうか?

上記の例でもわかるように、財務諸表にまつわる数値や関連情報の「真正」あるいは「不正がない」ことを担保しようと思うと関連法規の遵守も、大きなウェイトを締めておかなければいけないということにいきつき、結果的にたとえSOXとは一見直接関係内ようなことでもチェック機構が働くような業務プロセスあるいはITでの統制を考える必要があるということになります。

つまり、SOXの目的である「個人投資家の保護」の観点に立てば、コンプライアンスの観点からの対策も行っておかないと結果的に内部統制が利かず、企業が苦しい立場に追い込まれるわけです。

次回、もう少し、内部統制違反に関して思うところを書いていきたいと思います。
Posted by ka28_tnk ( 6月 08日 2006年, 03:44:33 午前 JST ) Permalink

20060607 2006年 6月 07日 水曜日

なぜ、SOXは制定されたか?
今日は 立法の背景についておさらいしたいと思います。

立法のきっかけはご存知のようにエンロン事件とワールドコム事件です。これらの2つの事件の際にいったいどういうことが起きたか改めて思い出してもらえますか?

この事件では会社は大打撃をうけました。いわゆる倒産状態です。しかし、アメリカでは倒産あるいは会社更生法適用(CP11)は日常茶飯事です。実はこの2つの事件の問題はあまりにも多くの投資家がこれらの会社の株を買い、その株の資産があっという間に消滅してしまったことです。エンロンの場合には従業員持ち株会でも大量に社員が購入していましたし、確か401Kでもかなり購入していたと記憶しています。
なぜ、多くの人たちがこの会社の株を買ったのでしょうか?
値上がりすると思ったからです。
なぜ値上がりすると思ったのでしょう?
それは企業が発表する財務諸表の数字が良かったからです。そして、それらの数値を元にあるいは企業の幹部に直接ヒアリングを行ったアナリストが「BUY」あるいは「STRONG BUY」というポジショニングを設定していったからです。

もっと、企業の中身を良く見るべきではないか?あるいはもっと会社の業績をチェックする方法をとるべきではないか?という意見があるかもしれません。しかし、上場企業はSECを通じてしか業績発表をしてはいけないことになっています。あるいは「全投資家に公平かつ同時に情報がいきわたる方法」を使って付随する情報を発信するしかありません。
これは全投資家(既存の株主であるか、潜在的な株主候補であるかを問わず)に同じ情報を与えないのは「不平等」であり、そういう方法をとらずに発信した場合は対象となった一部の人たちへの優遇策、すなわち「インサイダー情報の漏洩」ということになるからです。

話を戻すと企業の業績を判断する基本は「財務諸表」です。これは日本でもアメリカでも同じです。財務諸表すなわち、P&L、B/S、キャッシュフロー計算書の数値をみて、判断するわけですし、これらの数値に間違いがないことを担保するために監査法人が監査を行うわけです。
しかし、残念なことに、エンロン事件まで、これまで行われてきた監査を含む行為が、結果的に不正行為あるいは事実とことなることが記載されてきたことを看破できなかったわけですから、エンロン事件のあとは当然のように厳しい規制をしようということになったわけですね。
ですから、302条や404条のような条文をもつSOX法制定ということにつながったわけです。

次回は SOX法対策と内部統制を防ぐ仕組みの矛盾について話したいと思います。


Posted by ka28_tnk ( 6月 07日 2006年, 01:01:31 午前 JST ) Permalink


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