20060810 木曜日 8月 10, 2006

ヤマノイモ


繁殖戦略は雄間競合の観点から語られることが多いんですが、本当はそういうマッチョな (?) 繁殖戦略は、生物系全体の繁殖戦略の中ではほんの一部に過ぎない、もこのごろはよく言われるようになりました。植物の「雌雄」なんて、まああると言えばあるんですが、植物の繁殖は、オスとメスの関係、だけで行われているわけではありません。よく言われるのは、ヤマノイモ、で、ヤマノイモは、種子、イモ、ムカゴの三つの繁殖体を持っています。ヤマノイモの花は見たことない人も居られると思いますので写真を引いて置きますが、ヤマノイモは雌雄異株というか、雌株の雄蘂は退化していて、別途雄株がある、と言った方がいいのかな、雄株、は写真でそう言われてみるとマッチョな感じもしますが、実物はささやか、というか小さな花で意識して見ないとなかなか気がつかないと思います。種子の写真もついでに引いておきますね。DNA が交雑するという意味での進化論的な繁殖、は、種子ですし、種子は羽根がついていて「遠くまで飛んで、勢力拡大するぞ」が気持ちとしては表れているんですが、繁殖体としては、ムカゴやイモのような栄養生殖系の方が強力で、種子は補完的というか、三つあるウチの一つ、としての役割、ですね。

イモ、は、栄養量は最大ですが、その分人間も掘るし、ナマイキにもイノシシも掘って食べたりするらしいし、一株あたりの数が小さいから、そこだけに頼っていると Risk も大きいし、地中から離れることはできませんから、展開に乏しい。種子は栄養量は小さいし、どこへ飛んでいくか分かったものではないから、打率は悪いけど数で勝負、ですが、遺伝子的にはもっともオーソドックスな繁殖、です。ムカゴはあれもなかなかオツなものですが、まあ中間的、でしょうか。地味ながら、なかなかバラエティに富んだ三段構え、で、それも漫然と三段構え、ではなく、それぞれの繁殖体の発芽条件が異なっていて、気候変化のような外部環境の影響にも対処してます。植物の繁殖戦略は、特に 栄養体生殖は進化論的というより生態学的で、ましてや雄間競合とかとは関係ない世界ですが、ヤマノイモの繁殖戦略はよくできているし、だから人間やイノシシが結構掘っても、また翌年には掘りに行ける。健闘してますよね。

雄間競合で語る、が、どうもそうばかりではないだろう、は、所詮「雄間競合」だって、何を競っているかといえば主に「雌に気に入ってもらう」で競合している、ということでしょう。(極端なマッチョ型繁殖戦略、では、気に入ってもらう、より前に、モロの繁殖行動に及ぶ、という選択もありそうですが、これは、人情としても、自然界を見ても間違った戦略であり、あったとしても特異な例だと思います) ライオンの世界、は、一夫多妻制で、どうも雄ライオンは寝てばかりいて、割に繁殖 Oriented に生きているように見える、現にライオンの採餌行動 (いわゆる「狩り」) は雌ライオン中心で、動物園でみても雌ライオンは筋肉質で、雄ライオンはいかにも動き悪そうです。それでもちゃんと食べている、うらやましい、と言ったら、さる女性研究者に「あれは子供に食べさせるためにやっているので、雄ライオンに食べさせるためにやっているわけではない。でも、雄ライオンにも食べさせないと、子ライオンを食べてしまったりするので仕方なく与えているのだ」と教えて頂き ました。考えてみると、オスがシコシコ採餌活動して、メス (と子供) のところにせっせと運んでいるような動物の社会、は一夫一妻制であることが多くて、こういう社会で「雌に気に入ってもらう」ってなんだか分かりやすいですが、一夫多妻制の方がより競争が激しいはずなのに、ノホホンとしているように見えるのは「雄間競合」もなかなか深い世界であることを窺わせるし、少なくとも、雄間競合、は語感的にはマッチョ寄りなものがありますが、そうでもないんだろうな、と思います。

( 8 10 2006, 09:01:06 午前 JST ) Permalink