20061231 日曜日 12月 31, 2006

New Year's Eve


今年の一月に 東芝さんの WH 買収の News をこの Blog でも取り上げましたが、一年なんて本当に早いもので最近その WH の AP-1000 を中国が四基導入へ、が記事になっていました。中国は、米国と並ぶ「これからの原発の二大マーケット」で、東芝さんの WH 買収の大きな狙いだったと思いますが、早くも成果が見えてきています。

今日はもう大晦日ですね。まさかこんなに Blog を書き続けるとは一年前は思っていなかったんですが、何か News に反応して何かと書いている内にここまで来てしまいました。たまたまお目にかかった読者の方に、PWR だ、v-CJD だ、のような概念に慣れている向きには、ほぼ当たり前の話、しかし、原発、狂牛病は知っていても、PWR / v-CJD ってピンと来ない向きには、分かりにくい話、を、その Gap を埋めようともがいているのは分かるんだけど、なかなか大変ですよね、と慰めて頂いたことがあります。それほど大それた意図は本人にはないんですが、例えば新聞社には自分なんかよりよほど事柄への情報も豊富で理解の深い方々がいくらでも居られるはずなのに、日々の報道ではともすれば情緒的で一面的な Tone に流れるのは、それが読者の求める News だから、と言われればそれまでにしても、何だかなぁ、はあって、浅学菲才ではありますが「こんな見方も出来ますよね」が言いたくなる。ただ、書いたものを時間が経ってパラパラと読み返してみると、脱線や饒舌以上の何モノでも、なかなかなくて、お恥ずかしい限り、というか、それでも「ご愛読(?)」頂いた向きには、改めて御礼申し上げます。

脱線、饒舌、は、「毎日更新」が惰性になって、も反省点で、まあ惰性だってモノゴトを動かす一つの要素ですけど、さすがに一年以上続けたんで、毎日更新、は、そろそろ区切りかな、と。

それでは、良いお年を。

( 12 31 2006, 11:22:31 午前 JST ) Permalink
20061228 木曜日 12月 28, 2006

The Power of Dreams


Honda さん、で書きたかったのは、航空機事業のお話だったんですが、そろそろ押し迫って来て、年賀状も作らないといけないし、で「簡単に」触れさせて頂きます。戦後日本の自動車産業 (だけではなく、機械系一般 でもありますが) の人材的な原動力になったのは、大戦期までの、当時の日本としては「人材の宝庫」だった航空機産業が文字通り「翼を奪われて」地上に舞い降りざるを得なかった人々、は、よく言われるところです。スカイラインの中川良一さん、スバルの百瀬晋六さん、パブリカの長谷川龍雄さん、なんかは皆東大航空から中島や立飛で活躍された方です。Honda さんでもそれは例外ではなく、初期の四輪事業の推進者であり、世間的には「F1 のナカさん」だった中村良夫さんも、同じく東大航空から中島、そして Honda です。

Honda さんは、宗一郎御大の「いつかは飛行機だ」が草創期からの理念だし、古くから埼玉県川島町に自前の空港を持ったり、この分野にも「情熱」を傾けて居られたのは知っていても、「事業」としては遊覧飛行とか、で、まあ「世界の Honda」としては地味なところでした。Honda さんにとっての最大のメリットは、「御大が飛行機やるんだと言ってるぞ」で、航空工学出身の、元副社長の入交昭一郎さんや前社長の吉野浩行さん、のような Brilliant な人材を獲得できたことで、まあ充分モトは取れているんだ、は、これはこれで充分納得、ですが... その Honda さんが、遂に本格的に、というか、小型・軽量・低燃費の航空機用エンジンの開発を十年ほど前から続けておられて、いよいよ日の目を見ようとしています。Honda さんですからレシプロもやっておられるんですが、ジェットの HF118 はなかなかの傑作で、丁度この辺の製品では P&W や Williams にリードされ気味の GE さんとの Partnership (エンジンは高度な保守のネットワークとか、エンジン屋としての足回りが必要で、そこは GE さん、なのでしょう) も成立して、これから大きく育っていくんだろうと思います。ちょっと「びっくり」だったのは、十月に発表された「飛行機としての HondaJet も本格的に売っていく」宣言で、もう何百機もの受注を獲得されているようです。びっくりだったのは、単に自分が不勉強というか、HondaJet は HF118 シリーズ開発のための「実験機」兼 Promotion 用 Platform だと「誤解」していたから、ですが、その思い込みの理由は、 HondaJet のエンジン搭載方法がいかにもユニークで、どうです、いいエンジンでしょう、を強調している、に見えたことも一つです。ただ、大戦期日本の中島や三菱は、機体もエンジンも、の飛行機屋さんでしたが、これは世界的には例外で、機体とエンジンは分業、が、航空機産業のいわば「常識」に近い。(他に例外は、これもお古いんですがドイツのユンカース) B747 のようなベストセラー機の場合、GE も P&W も RR も挙って B747用エンジンを開発するし、ボーイングさんにとっても、航空会社の「好み」でどこのエンジンでも付きますよ、は Merit になります。

そこをあえて、エンジンも機体も、なのが、さすがは Honda さん、なのかも知れませんね。分業の大きな理由は、開発リスクの分散、だと思いますが、小型機だし、コンパクトなエンジンですから、十兆円企業の Honda さんにとっては、「両方」でも過大なリスクではない、も大きいにしても、どうせやるなら徹底的に、というか、航空機事業は本田宗一郎さんの、まさに「百年の夢」であり、いよいよ (宗一郎さんの生誕百年である今年に) それがビジネスとして実現する、宗一郎さんがご存命なら、両方やれとおっしゃるに決まってるじゃないか、みたいな部分を感じます。Honda さんの Corporate Tagline (Sun で言えば "The Network Is The Computer") である The Power of Dreams は「夢こそが力だ」だと思っているんですが、ホンダスピリットはますます健在、で心強いですね。

( 12 28 2006, 09:08:37 午前 JST ) Permalink
20061227 水曜日 12月 27, 2006

燃費こそ環境性能


今月 15日に国土交通省が、2015 年度を目標年度とする新しい燃費基準の中間とりまとめを公表しています。乗用車で言えば、13.6 Km/l から 16.8 Km/l (JC08 モード) へ 23.5% の改善、が具体的な数字、ですね。「燃費の改善」そのものは、ここだけが決め手という一点突破ではなく、要素技術を一つ一つ多角的に取り上げて、その総合として実現されるのですが、なんと言っても乗用車レベルで言えば、「消費される燃料の本来の (燃焼) エネルギー」の 15% 程度が走行エネルギーに転換されているに過ぎませんから、原理的には十分「やろうと思えば出来る」数字です。全世界の乗用車で 23.5% の燃費改善は「バイオマスエタノール」に換算すれば、全世界のトウモロコシ穀粒の全収穫をそのままエタノール生産に投入するのに匹敵する効果であり、トウモロコシの全収穫をエタノールに、はどうみても絵空事ですが、23.5% の改善、は、現実的な Technology の積み上げで充分実現可能です。Honda さんは Web の Top Page に、「Eco、燃費こそ環境性能です」と掲げておられますが、石油を湯水のように使う代わりに、農産物を大量投入する、は、どう見ても Eco とは言えない、本命は古臭いですがやっぱり「節約」なんだと思います。

難しいのは、「節約」にも Cost がかかることです。一台のクルマのライフの間に、23.5% の燃費改善によって、1,000l のガソリンの「節約」が可能だとして、その効果を 150円 / l で掛け算すれば、15万円、ですが、15万円の追加費用で、23.5% の改善を獲得しよう、は、そう簡単ではない。ボディーを鋼板から炭素繊維複合材に、の燃費改善効果が大きくても、「十五万円」でそれが出来ますか、は、現時点では確実に No で、地味に要素技術を積み上げていくしか、なかなか実現できない。自動車会社さんの技術開発力や、「積み重ね」の大きな部分を担う部品や部材供給者の技術力の総合、を考えれば、日本勢の Potential は高くて、十五万円なら「十分達成可能」な水準だろうと何となく思いますが、GM さんや Ford さんにそれが可能か、は、また別の問題です。米国が「世界経済」に打撃を与えかねない方向である「トウモロコシ (を中心とする、農産物系の) バイオメタノール」に Drive して居られるのは、農産物国際価格の値上がりは世界経済的には打撃でも、一国経済的には (「国内調整」が必要はあるにしても) むしろ Plus という「持てる国」の論理が見え隠れしていて、「持たざる国」の国民としては、モー、なんですが、米国にしてみれば「燃費改善技術」の競争では、ただでさえイタんでいる米国 (を母国とする) 自動車産業に勝ち目が薄い、20 - 30% のエタノール添加なら、新たな技術競争はない、別の意味で「持たざる国」としての選択、の意味もあるんだと思います。

実際のところは、Technology 的な意味での燃費、は、第一次石油危機以降、Trend としては向上しているにも関わらず、「自動車用燃料」の消費は増えている、は、二月あたりにこの blog で触れたように、自動車の台数が増える、や、自重の大きい「高級車」の増加で、(重量当たり、の Technology 的な意味での燃費は改善されても) 人口一人当たりの燃費、は悪化しているから、が大きいのですが、こっちの方の「節約」の決め手である「価格効果」はすでに発動されていますから、すぐにも抑制的に働きます。その方向も、Prius のように Eco Technology を「高級」に結び付けられる、日本 (を母国とする) 自動車屋さんにとって有利で、クルマのデカさ、や、一台あたりの採算が悪くても数で、が勝負の会社には不利、を加速する、はあって、話がややこしいのではありますが...

( 12 27 2006, 08:53:41 午前 JST ) Permalink
20061226 火曜日 12月 26, 2006

Isle of Man TT Race


農産物でもエネルギーでもそうなのですが、そういう資源系ではワガクニは「持たざる国」の代表選手で、まあ中途半端に「持てる国」だと何かと面倒だ、もあるし、割りに一途に「持たざる国」を貫く、というのも生き方としては分かり易いところもあるのかも知れません。ただ、「持たざる国」だからといって、資源周りの Technology 開発を無視してよい、にはならない。ソフトバイオマスからのエタノール生産、にしても、そんなのやってもワガクニにはソフトバイオマス資源さえないんだからどんなものだろうか、と考えるのか、むしろ「せめて Technology だけでも」と考えるのか、は、両方あるところにしても、Honda さんのような「世界」を相手にしておられる会社では、Technology だって、母国で一国的に成立するかどうか、には、そんなに意味はないんでしょう。

Honda さんの「世界を相手にする」はスジガネ入り、といいますか、Honda さんが二輪の世界最高峰のレースである、マン島 Tourist Trophy に挑戦、を発表されたのは 1954年で、ワガクニが被占領国からようやく独立国になりかけの時代ですから、本田宗一郎さんの「情熱」は並みや大抵ではありません。二輪のレースで「常勝」になった十年後の 1964年には今度は四輪の F1 にチャレンジされる。四輪事業に、最初は軽トラックからで進出された直後に、「普通の乗用車」より先に F1 やります、は、今と比較すれば、F1 へのまともな挑戦にはお金も Technology も半端じゃなく必須、ではなかったにせよ、Honda さんの企業規模、も今とは比較にならない、文字通り空前絶後のチャレンジです。(二輪での「実績」があったから、それなりに本気に取ってもらえた、はあるんでしょうが、評価されていたのは、Technology とか、いわゆる「実力」というより、「情熱」が実現させる何か、の方ではなかったか、と思います。いい年をして、「情熱」も気恥ずかしい表現ではありますが、本田宗一郎さんは 1906年生まれ 64年には 57才ですから、トシには関係ない、ということでご勘弁頂いて...)

何でもベトナムでは Honda は固有名詞ではなく、原動機付きの二輪車を指す普通名詞だそうですから、「模造車屋さん」はいくらでもあるんでしょうが、汎用の二輪 (趣味性の高い二輪、では BMW なり KTM なり、ヨーロッパ勢も頑張っていますが) は、もう長い間、日本企業以外に「まともなメーカー」は存在しません。(それを牽引したのは、Honda さんのマン島 TT を嚆矢とする、日本勢のレースでの圧倒的な Results です) ですから二輪にルーツのある企業が、「世界」市場を見ておられる、は当たり前といえばそうなのですが、ほぼ「十兆円企業」の Honda さんの海外売上比率が 83% = 国内販売比率は 17% というのもスゴイ数字ですね。17% と言っても、十兆円企業の 17% で、非常に大きな数字ではありますが、「日本の売上比率が世界の 17%」は Sun の日本法人だって円高の時期の瞬間風速とはいえ、それに近い数字だったことがあるような気がしますから、Honda さんの「母国」であるワガクニは、世界を相手にして居られる Honda さんにとっては、Market の一つ、であり、ソフトバイオマスエタノールの研究、も、その文脈で進めておられるに違いありません。

( 12 26 2006, 08:53:16 午前 JST ) Permalink
20061225 月曜日 12月 25, 2006

Soft-Biomas Ethanol (2)


「食用部分」以外の植物産物を利用したバイオマスエタノール、のソースとして考えられるのは、大きく言って三つのカテゴリーです。一つは、「農産物」の食用以外の部分の利用、ですね。わかりやすい例としては、トウモロコシで言えば、軸や茎、葉をエタノールに持っていこう、が挙げられます。軸や茎葉だって、飼料に用いられたり、畑に戻して地力の維持に用いられたり、で、全部をエタノールにしていいのか、という問題はあるし、第一完全に集荷できるというものでもないので、トウモロコシの軸や茎葉からのエタノールがどれだけ、は難しいのですが、米国で三億トンのトウモロコシ穀粒の生産に見合う、軸や茎葉の 80% を仮に五億トンとして、内、セルロース系成分のみがエタノール発酵原料になる (いずれにしても製造の際に燃料は必要なので、リグニンなどセルロース系以外の成分は燃料に) としても、まあ一億 Kl にはなりそうです。80% を利用、は過大かもしれないんですが、小麦や大豆など、他の農産物の茎葉とかも利用可能ですから、Total で一億 Kl なら、そんなに非現実的な数字ではありません。

既存の農産物の栽培不適地に「エタノール用の作物」を植える、も有力なソースとして検討されています。水や土地の条件が悪くて、(現状での) 商品作物の栽培不適地でも、主にセルロースを利用するつもりの植物を粗放に栽培するなら可能な土地は、米国のような広い国ではいくらでもありそうです。候補になっている「作物」は、ソルガム (コウリャンの類) やヘンプ (いわゆる大麻)、スイッチグラス (現在は土壌浸食防止用に植えられることが多い) などで、いずれも、成長が早く、病害虫にも強くて、粗放に育てても生産性の高い植物です。もう一つのソースは木本で、これは成長に時間のかかる話でもあるし、構造材や製紙原料としての需要との競合もありますから、直近で大きいのは、端材や製材クズのような未利用資源ということになります。長い目で見れば、構造材や製紙原料としては価値の低い、従来「有用樹木」とはみなされていなかった樹木の荒蕪地への植林を進める、は、何もエタノール用だけでなく、その成長過程での CO2 固定効果も大きく「有用樹木」にこだわる必要がないことは大きな Merit です。「エタノール用作物」や「木本の利用」の規模感、は、多くの部分が「これからの話」ですからまだ何とも言えませんが、全世界的に見れば、大きな Potential があることは間違いなく、2012年には間に合いそうもないとしても、どこかで「エタノールエンジン」の時代が来る、を量的に支えるベースは「何となく」見えてきていると思います。

残念ながら、日本でのこれらの「植物性資源」の利用には、そう楽観的にはなれません。一つは、やはり国土が狭いことで、日本の主要な農作物であるコメの生産量は FAO ベースで 800万トン強、であり、茎葉やモミ殻の量だってそれ見合いですから、やはり「家畜の飼料や輸出」の米国トウモロコシとはケタが違いすぎます。資源としてソコソコなのは、樹木ですが、これも以前述べたように、伐採や集材のコストが地形の問題と人件費から異様に高く、とてもエタノール原料としては引き合いそうもありません。

( 12 25 2006, 08:47:42 午前 JST ) Permalink
20061222 金曜日 12月 22, 2006

Soft-Biomas Ethanol


2012年 (これは京都議定書の期限、でもあるわけですが) までの、米国での「バイオマスエタノール 2,800万Kl」だって、それを米国産のトウモロコシだけで達成しようとすれば、そんなにスムースには行かない。国内の飼料価格が騰がる、とか、輸出制限 (これは日本への影響大) とか、大豆農家がトウモロコシに転換 (これも日本への影響大) とか、何らかの Trade-Off があって初めて達成可能、という気もします。(ありうるシナリオとしては、米国内か、他国かは別として、エタノール用に吸い上げられる農業生産をカバーするために、CO2 の吸収能力と蓄積の大きい林地を切り拓いて新たな農地を、というのもある。これは、CO2 バランスとしては、最悪のシナリオ) サトウキビの方は、比較的 Trade-Off の少ない増産が可能だと思いますが、Trade-Off が少ない、を前提にすれば、今の五倍も十倍も、は、考えられない。既存の農産物からのバイオマスエタノールでの、「ガソリン添加 (代替)」は、12年まで、と考えると、1億Kl だって難しそうで、仮に 1億Kl 出来て、それを全て米国の自動車用ガソリン添加に注ぎ込むとしても、精々米国の現状のガソリン消費の 20% (燃費ベース。容積ベースで言えば、もう少し多くなる) に過ぎません。

じゃあバイオマスエタノールなんて駄目駄目じゃないか、は、必ずしもそうではありません。限界がある、Trade-Off がある、のは (既に利用されている) 農産物を原料としたバイオマスアルコールだから、で、もし、本格的な「代替」が可能だとすれば、同じ植物産物でも、その「食用部分」(である澱粉や糖質) 起源ではなく、「未利用部分」(であるセルロースやリグニン。木質と言いたくなるのですが、別に木本だけではなく、草本にもいくらでも含まれています。ハイカラに言えばソフトバイオマス) 起源なら、大きな展開があり得ます。例えば、これは、本田技研さんが RITE さんと共同でやっておられる研究に関するリリースですが、うまくまとまっていると思います。Honda さんが、「ソフトバイオマス」を本命と考えておられるのはよく分かりますね。自動車屋さんにしてみれば CO2 排出問題にせよ、「化石燃料はいつかはなくなる」にせよ、将来の自動車の「一つの本命」(もう一つの本命は電気の利用) はエタノールエンジン、は自明です。しかし、現状の「農産物からのエタノール」だけでは、量的に見て、とても「エタノールエンジン」の時代が来るとは考えられません。(エタノールを添加したガソリン、は、添加量にもよりますが、容量比 20% 程度なら、まあ「ガソリンエンジン」です)

Honda さんが、すでに単味のエタノールエンジン (単味ではなく 80% エタノールとかの、エタノールリッチな混合燃料かも知れないが) に何らかの技術的な自信を持って居られたとしても、ソフトバイオマスエタノールが実用化されて、世の中の Major な自動車用燃料が単味のエタノールに移行する、という「量的な裏付け」がなければ、それは「宝の持ち腐れ」です。それを実現しようとすれば、まずソフトバイオマスエタノールの技術が先だろう、と、考えておられるとすれば、ワクワクしますね。そこまでのことはなくても、本気でエタノールエンジンやるとすれば、大前提は「エタノールの供給」であり、そこの最先端研究に実際に関与していないと、見るべきモノが見えてこない、好むと好まざるに関わらず、「自分でも」ソフトバイオマス利用の研究を進める、は避けて通れないのでしょうから、やるんなら本気でやるぞ、は、さすがは Honda さんだと心強い思いです。

( 12 22 2006, 08:56:31 午前 JST ) Permalink
20061221 木曜日 12月 21, 2006

Amendment XVIII


「再生可能であることは、とりあえず良いこと」には、イマドキは皆さんそう思っておられるので、あんまり反対するのも説得力ないのですが、果たして「トウモロコシからのバイオエタノール」がどの程度再生可能エネルギーなのか、は、議論の必要なところです。これも、サトウキビとの比較が分かり易いのですが、サトウキビは良くも悪くも比較的粗放に生産されているのに対して、米国のトウモロコシ (というか、正確には「粒のトウモロコシ」の為の生産の場合、畜産農家が青刈りで家畜の飼料にする場合は、割に粗放) は大規模な機械化農業であり、農場での「化石エネルギー」の原単位が、サトウキビよりまず大きい。また「バイオマスエタノールの工場」においても、ブラジルの「もともとは製糖工場」だったエタノール設備、と、米国の「現代技術の粋を集めた工場」は、言ってみれば「地酒の蔵元」と「大都市圏の大型ビール工場」くらいの差があって、プラントとしての化学工学的な効率で言えば、それはビール工場なのですが、発酵は生き物相手なんで、Total でみれば案外地酒の効率も捨てたものではありません。

何よりも、「伝統的な蔵元」の方は、化石燃料なんかない時代からやっているので、燃料としてはサトウキビの絞りかすを利用する、で成り立っているのに、ステンレスピカピカの最先端ビール工場は、化石燃料の集中ボイラーがないと動きませんし、昨日述べたように「トウモロコシから」は工程が長いので、製造の際の「化石エネルギー原単位」でも、トウモロコシから、は大きくかかってしまう。トウモロコシからのバイオマスエタノール「そのもの」は、確かに「再生可能エネルギー」なのですが、その製造に際して、化石エネルギーをかなり消費してしまうという意味では、「再生可能度」は決して高くなさそうです。どの程度劣るのか、は、数え方や、「トウモロコシ推進派かどうか」の立場によって違うので、どれが正しい、というものでもないのですが、トウモロコシからのバイオエタノールそのものは「再生可能」であり CO2 ニュートラルであるとしても、それを生産するために化石燃料をジャブジャブ使っていたのでは (燃料自体は「石油」である必要はないので、石油の節約にはなるのですが) CO2 の排出の削減効果は小さい。サトウキビの絞りかす、は、空気中の CO2 を固定した産物で、そこも CO2ニュートラルですから、京都議定書 (もっとも米国は参加していませんが) 的にも、サトウキビの方が Eco で、トウモロコシはいかがなモノか、です。

Eco なり、「再生可能」は耳障りが良いので、「トウモロコシ推進派」の Marketing 手段としては有効なのですが、米国は別に推進派一色ではありません。「反トウモロコシエタノール派」の筆頭は、食肉業界で、食肉用を中心とする家畜の飼料用、は、米国のトウモロコシ生産の半分以上 (輸出用、エタノール用を除けば 80% 以上) が振り向けられているんですから、バイオマスエタノール用に引っ張られて自分たちの Cost が上がってしまったのではたまらない。前述したように、トウモロコシからのバイオエタノールには、「国家意志」を除けばあまり合理的でない部分が多くて、突つきドコロ満載、なんですが、彼らの Marketing Message は「仮にも食糧をそんなものに使って良いのか」論です。これは米国では古典的、と言いますか、1919年に成立した合衆国憲法修正十八条、いわゆる「禁酒法」だって「仮にも食糧を」論が大きな動機になっていて、あれだけの「愚法」を成立させた原動力だから、なかなか強力なのだと思います。日本ではトウモロコシそのものを食用にする、は、屋台とかお菓子の世界、ですが、米国は「トウモロコシ由来の粉食文化」の中南米諸国の隣国ですがら、(中南米の人口の都市集中、も一因ですが、地場の、自給自足的なトウモロコシ栽培、を縮小させて、「主食でさえ米国から輸入」に変えてしまったのは、「米国の近代的・効率的なトウモロコシ農業」だ、はこの際忘れて) 訴えるモノは違うんだと思います。

( 12 21 2006, 08:52:39 午前 JST ) Permalink
20061220 水曜日 12月 20, 2006

Molasses


サトウキビとトウモロコシのバイオマスエタノールへの転換効率は、にも諸要素があるのですが、まず、出発点として、非常に単純に、現在の「国際相場」で、原糖とトウモロコシはカロリー当たり等価、と考えてみましょう。その場合、サトウキビから原糖を作る際に副生する、結晶にしにくい糖分を多く含む、廃糖蜜 (Molasses) と呼ばれる成分は、エタノール発酵の原料として利用可能 (ラム酒、は、Molasses から作られるお酒です) であり、サトウキビで利用可能な成分は、製品としての原糖だけではない、が、まず有利です。(廃糖蜜、は、家畜の飼料に添加されたり、発酵用原料として用いられる、例えばいわゆる味の素 = グルタミン酸ソーダ、の多くはモラセスの発酵産物で、文字通りの「廃物」ではないのですが、それは「利用される場所」での価値で、砂糖工場から出て行くところでは、ほぼ「無価値物」に近い) 今でも、過酷な国際市場に出て行くほどの価格競争力はないが、国内消費用に大量の砂糖の生産のある国、例えばインドでは、「廃糖蜜だけを原料にするバイオエタノール工場」が動いていると思います。

またプロセス的に考えても、原糖は、サトウキビの絞り汁 (ケーンジュース) を精製して製造される、当然、ケーンジュースの価値は、糖価マイナス精製費用、なのですが、トウモロコシからの場合は、主成分はデンプンですから、それを加水分解して (化学反応で、か、発酵で、かはありますが) 言ってみれば、一手間掛けてケーンジュースのような砂糖の溶液を作って、そこからエタノール発酵が始まります。かなり乱暴な言い方になりますが、トウモロコシ価格 + 加水分解費用、と、原糖価格 - 精製費用、が、「エタノール発酵の原料価格」になるわけですから、カロリー等価であったとしても、片や加工費が控除され、片や加工費が付加されるところから「エタノール発酵」がスタートする。ここも、エタノール発酵原料としてのサトウキビの大きな優位性、です。

トウモロコシからのバイオマスエタノールのコスト競争力が (ブラジルの)サトウキビからのそれに比較して乏しい、を、米国も認識している、は、ブラジルから輸入されるエタノールに $0.14/l と高額の関税を課していることでも明らかです。いくらなんでも $0.14/l もの Cost 較差が存在しているとは思えませんから、トウモロコシからのバイオマスエタノールの産地である中西部から東部までの運賃と、ブラジルからの運賃の格差 (輸送距離は短いが、タンカーの海上運賃に対して陸送ですから、ブラジルからの方が安くても不思議はない) とかも勘定に入っているのかも知れませんが、とにかく、高い関税障壁を設けても、「国内での (Cost 競争力の乏しい) バイオエタノール生産を守る」という、おおげさに言えば米国の国家意志の現れ、ですね。それだけ、米国にとって、トウモロコシもガソリンも大きい、であり、「本気にならざるを得ない」は、そうなんだと思います。大国である米国が、「本気」になれば、Cost とか原理は関係ない、どうみても「単純な競争力計算」では大きな差のあるバイオマスエタノールの製造で、米国での生産がブラジルを抜いてしまう、は、「簡単な話」であり、無理が通れば道理が引っ込む、の結末とはいえ、Total で「再生可能燃料」への転換が進むのは良いことじゃないか、という好意的な見方もあります。

( 12 20 2006, 08:59:44 午前 JST ) Permalink
20061219 火曜日 12月 19, 2006

Ogallala Aquifer


キロ二百円近くの「国境調整金」を払わないと Pay しない南西諸島のサトウキビ農業、を「それでも保護」しているのは、じゃあ今の南西諸島のサトウキビ農業を他の作物に転換すれば、「離島経済」が成り立つのか、というと、それは No だから、が理由です。(「サトウキビ以外の作物が成り立たない」一番単純な理由は、南西諸島が台風常襲地帯で、一般の作物は倒伏すると全滅ないし大幅に収量が落ちるのに、サトウキビはそれほどでもないから、です) さすがに、南西諸島のサトウキビからのバイオマスエタノールの商業生産は論外ですが、多くの伝統的なサトウキビ産地は、「サトウキビ以外の作物を栽培しようと思ってもできない」ところが多くて、そこでは、「他の作物の栽培も可能だが、歴史的蓄積もあってサトウキビに最適」のブラジル (でもサンパウロ州周辺) には、生産費で及ばないので、現状の (半ば人為的な) 低価格環境下では、それほど元気がないのは事実です。しかし、それでも、他の作物で Pay している耕作地で今から「サトウキビに転換」しようと、比較すれば、ヒケを取らないと考えられます。「現在の主産地」であるブラジルでの未利用地も含めて、「他の作物」との競合なしで相当の増産が期待できる。これはサトウキビの有利なところです。

トウモロコシの生産適地、は地面の面積としては、サトウキビよりずっと広いと思われます。ただ、ネックは水 (灌漑) にあって、今でもトウモロコシの作・不作は、降雨量に大きく左右される地域が多いし、米国のように灌漑への投資が進んでいるところでも、今度は「利用可能な水の総量」に制限があります。今、他の作物が栽培されているところをトウモロコシに転換する、は、可能で、だから、他の穀物の相場も連れ高になったりするのですが、新たに、今、他の作物が栽培されていないところに、トウモロコシ畑を飛躍的 に増やす、には制約が大きい。日本は降水量が豊富で、水管理は主に余水の排水どうするか、の国ですので、ピンと来ないんですが、日本の降水量は、温帯としては異様に高い。内陸部分の割合が高い国、と比較すると多いのは当たり前なんですが、西「海岸」の、例えばカリフォルニアと比べても降雨量は四倍に相当 します。米国で 1,000mm 以上の降水があるのは、南北戦争当時の旧南部連合地区位のもので、米国の「穀倉地帯」は、慢性的に水不足です。幸いにも中部地区には、オガララ帯水層と呼ばれる、日本の国土面積より広大で豊富な地下水層があり、 そこから汲みあげた地下水による灌漑が、穀物生産 (主として小麦) を支えてきました。しかし、さすがに百年近く汲みあげていると (本格的に汲みあげるようになったのは、電気が普及した 1930年頃から) その水位も下がってきます。それだけでなく、地下水には大なり小なりミネラル分が含まれているし、少雨地域を流れる河川には塩分含有量が多いので、「灌漑農業」は、それを洗い流すような降雨がない場合、どうしても塩分が徐々に濃縮されて「塩害」を引き起こします。トウモロコシは比較的耐塩性の高い作物ですから、多少の塩分蓄積があっても、何年かに一度は洪水でもあって、洗い流して呉れるようなところなら、長期に営農可能ですが、一般に「水不足」(近年は、塩分の蓄積を防ぐため、植物の必要量 + 蓄積され た塩分を流すための給水、が必須になりつつあり、単位面積当たりの給水量は増加傾向) を克服できるような「新規の営農地」をトウモロコシの適地で見いだすのはかなり困難です。その点、サトウキビ適地は、少なくとも年間の降雨量という意味では十分な熱帯地方であり、そこにネックはありません。

世界の食糧問題、は、水は天から降ってくるものと決めている日本人にはわかりにくいんですが、「穀物生産には水が必須」問題で、例えば中国の食糧輸入量、は、趨勢的には人口問題でも、単年度を取ってみると、東北や内陸部の降水が少ないと輸入量が増える、が大きい。折角「最も貴重な農業資源」である降水が豊富なのに、農耕適地が少ない日本、は、世界の農業から見ると、かなりユニークな国です。

( 12 19 2006, 08:54:45 午前 JST ) Permalink
20061218 月曜日 12月 18, 2006

Sugarcane or Corn


バイオマスエタノールやるなら、穀物から、より、サトウキビから、でしょう、には、生産性、CO2 削減効果、増産可能性 etc. 数字的な根拠は色々挙げることが出来て、それは後で簡単に触れたいと思います。トウモロコシのメリット、は、これは「最大の (ガソリン) 消費地である米国での生産が可能」に尽きます。(数字的、にも小さくないメリットですが、どちらかといえば「政治的」に大きい、のかも知れません)

自分が、そりゃサトウキビからだろう、と思う最大の根拠は、サトウキビなら、「他の物価」への波及効果が最小限に止められる、にあります。見て来たように、原糖の国際価格は消費国の国内産糖の保護政策で、大きく歪んでいます。日本の例、は、極端かも知れませんが、消費国での (国境調整金込みの) 精糖製品の消費者価格は、原糖の国際価格、から見ると、かけ離れた値札が付いていて、それが一般に言うところの「物価」の要素になっています。国境調整金の原資が減少した場合の、国内産糖補助をどうするのか、は別の問題ですが、現行の「砂糖の消費者価格」は、単純な原価計算から言えば、原糖価格が倍になってもびくともしません。そうはいっても、国境調整金をゼロにするわけにはいかんだろ、は、あるにしても、幸いにも「人為的な高値」が付いているお砂糖、は、要は「嗜好品」ないし「嗜好品の原料」として使われているんで、値上がり、が「国民生活」に大きな影響を与える、とは考えにくい。コストプッシュは当然多少はあるんですが、例えば「羊羹」を考えてみると、天候次第で価格変動の大きい「小豆」を主原料にしているのに、虎屋さんや駿河屋さんのご盛意かも知れないんですがしょっちゅう値段が変わる、というものではないですね。連想、や便乗値上げ、も、落ち着いて考えてみれば、お砂糖がキロ 100円上がったところで、なかなかコーヒー一杯に 10g 使うモノではないですから、一円にもならない。お砂糖値上がりしましたから、コーヒー値上げします、とはさすがに言いにくくて、まあ、今まで 7g の角砂糖使ってたけど、これからは 6.5g にしよう、とかあるかも知れませんが、それは身体に良かったりもする。トウモロコシのように、実際のコストプッシュも連想、便乗も起きやすくて、それが「基礎的な食材」の価格への影響として現れるものとは、Risk が全く違います。

これは、「増産可能性」の議論でもあるのですが、「人為的に国際糖価が低く放置されてきた」ことは、「少しでも国際糖価が上がれば、今まで引き合わなかったところでの生産が増える」可能性が高いことを意味します。一番簡単には、国際糖価の低迷から「輸出補助金」が出ていたような国では作付け制限が Set になっていたりするんですが、補助金出さなくても Payするようになれば、その制限が外れる、それだけで「増産効果」がありますね。かつての「砂糖王国」だった西インド諸島諸国のように、「砂糖経済」だった国では、補助金の原資なんかありませんから、それで「国際競争」に負ける、サトウキビ畑は荒れていく、になっているところがありますが、それだって復活できる。「価格効果による増産」は、もっとも単純な経済原理で、今までの Total の需要が (ほとんど) 増えない砂糖、では、ちょっと価格が騰がる、みんなが増産する、かえって価格は下落する、の方に回っていたのですが、バイオマスエタノールという受け皿が出来たことで、その不安は解消される。しかし、さすがにもう「かえって価格は下落する」はないにしても、価格上昇の頭は「増産効果」で抑えられますから、まあ、楽観的に言えば、「今までの人為的な低価格が、(消費者価格にはそれほど影響しない) そこそこ Reasonableな水準で安定することで、大きな増産が (自然に) もたらされる」のようなシナリオを描くことが可能です。

( 12 18 2006, 08:46:20 午前 JST ) Permalink
20061215 金曜日 12月 15, 2006

Toilet Paper Panic


「トウモロコシの市況」は、ずっと在庫圧力が大きくて長く低迷していたし、今年は天候が良くて豊作だったこともあって、二ドル台前半、で推移して来たのですが、九月頃から騰勢を強め、一時は四ドルを窺う、十年来の高値水準をつけて、今も三ドル台後半を維持しています。(単位はブッシェル当たりなんですが、このブッシェルがまた摩訶不思議な単位で、米国の「メートル法嫌い」もいい加減にして欲しい...) 相場、ですから、騰がるのに別に理由は要らないんですが、騰がる材料としては、ガソリン市況が有力な材料で、「トウモロコシが $4 超えても、ガソリン代替原料としては (WTI が $60 なら) Pay する」が囃されています。これは、計算すればそうなるとしても、実際、という意味ではバカな話で、じゃあすぐトウモロコシからのバイオエタノールの生産が増えて、そこにトウモロコシの実需が引っ張られるのか、というと、WTI $60 で Pay する、ある程度以上の規模のバイオエタノール・プラントを作ろうとすると、発注してから稼働するまで、まあ Rock を Tape-Out (この記事に関連して、何か書かないの、と「ご要望」頂いたんですが、さすがにまだこれだけの材料ではちょっと無理、ですね。万一期待して居られるといけないので、無理矢理触れておきます) してから実際の System Box が市場にでるまでの期間より早い、とは思えませんから、短期的な需給とは関係ありません。ただ、それでも「騰がるモノは騰がる」、実際には、米国の豊作による値下がりに業を煮やした、(米国の輸出の 1/5 程度の規模、ですが) 世界第二位のトウモロコシ輸出国であるアルゼンチンが輸出規制を発動した、も反騰のきっかけで、それに、「原油相場」で稼いだ人達が WTI はもう面白くないから、で参入した、が大きいんでしょうが、まあ「おもちゃ」になっている、と考えるのがこの間の市況の一番簡単な説明、です。

第一次石油ショック (73年) の世界経済へのダメージが大きかったのは、量的な危機、より「価格危機」で、それも石油価格の値上がりそのものの影響、ではない、むしろそれに触発された、「全般的なインフレ」が与えた影響だ、は、よく言われるところです。日本で有名なのは「トイレットペーパーパニック」ですね。トイレットペーパーは嵩の割に単価の安いモノなので、もともと「在庫」は小さく、しかし、スーパーマーケットの「棚」は、大きく占有していました。それがある日、とある GMS で沢山売れて、棚がスカスカになった、でもすぐには在庫の補充が付かなくて、その「スカスカの棚」が、妙に目立って、何か「量的危機」が目前に、の Reality に結びついてしまった。トイレットペーパーが「本当になくなる」は困りますから、「売っている時に買っておかないと」が消費者心理になる。GMS さんも、棚をスカスカにしておく訳にはいかないので、急遽仕入れを掛けるんですが、「実需」対応なら十分な量でも、「買っておかないと」の「仮需」は膨大ですから、すぐまた売り切れてしまう。その光景が Media に乗ったりすると、「識者」の「実際に足りないわけではない」のコメント付き、ではあるんですが、目の色変えて売り場に群がっている、の方がよほど説得力があって、全国に波及する。「識者」のおっしゃるとおり、実際には足りない訳でもなんでもなくて、通常の流通在庫を大幅に上回る「消費者の押し入れ在庫」が発生しているだけ、なんですが、流通の現場では「量的危機」が生まれてしまう。連想ゲームのような形で、それが、洗剤とか、ついには「食塩」とか、生活必需品であり、かつ日持ちのするもの一般に仮需がどんどん拡大してし まう。「売り惜しみ」は、実際にあったとしても「実需を優先します (仮需には対応できません)」の、ごく真っ当なものが殆どだった筈ですが、タマには悪乗りする人もいる、で、消費者の押し入れ在庫、は「個々の消費者」にとっては、押し入れが満杯になればそこで Panic は終了、でも、一度弾みのついた仮需は次々と波及して、「たかがトイレットペーパー」が、実際の石油の値上がりによる価格変動の範囲を大きく超えた「狂乱物価」の引き金になってしまった、みたいなことです。

「石油の値上がり」は、運輸機関の輸送用燃料の値上がり、など、実際のコスト上昇要因になる、はある程度避けられない。そういう Reasonable な Cost Up に対する「耐性」は、世界経済は十分持っている。しかし「連想」で、別にトウモロコシが実際に足りなくなる訳でもないのに (多少足りなくなっても、それを補う在庫はたっぷりあるのに)、トウモロコシの「相場」が騰がる、や、それが引き金になって、(トウモロコシを「原料」にしている) 畜肉の価格が騰がる、や、他の穀物が騰がる、が起きて、それが Spiral になる、杞憂に過ぎないと思いたいですが、そういう Risk を秘めています。

( 12 15 2006, 08:47:50 午前 JST ) Permalink
20061214 木曜日 12月 14, 2006

Photos of Xeon 5335


Intel さんの Top Page を見ると、Clovertown は、Dual Core の Woodcrest Die を二個まとめて切り出したものに、見えないこともないんですが、何のことはない、c|net に出ている写真を見ると、「二つの Die」は「独立の二つの Die」であり、それを一つの Package 上に並べて封入して、「一つの Chip」にまとめている、がよく分かります。なかなか合理的といえばそうだし、Packaging の技術が高い、も認めるし、意味がない、とは言いませんが、今まで「なんちゃって Quad Core」と言ってきたのが、うーん、想像してなかった訳ではないですが、これは少なくとも Woody ちゃんが Dual Core という意味での Quad Core とは「見るからに別もの」で、「なんちゃって」でさえ言い過ぎでしょうかね。なんか適切な表現ないかなぁ。

( 12 14 2006, 03:56:04 午後 JST ) Permalink

MTBE


米国でのバイオマスエタノールの需要は、元来は排出ガス浄化のために「自動車用ガソリンには含酸素素材を一定割合で混ぜなければならない」とする規制が発端で、含酸素素材としては従来石油系の合成物である メチル t-ブチルエーテル (MTBE) が主として用いられてきました。ところが、この MTBE が水に溶けて、地下水を汚染する可能性、が指摘されて、MTBE の禁止 -> (同じ含酸素素材である) エタノールへの代替が主に中西部の「トウモロコシ生産州」から広がって行ったこと、が、今世紀に入って、トウモロコシからのバイオマスエタノールの生産が増加した要因です。00年から 04年で、バイオマスエタノールの生産は 617万Kl から 1,291万Kl に増加していますが、MTBE の需要は、1,249万Kl から 687万Kl に減少していて、ほぼ見合いになっているのが、その事情を表しています。ブラジルのような「燃料代替」ではなく「添加剤代替」としての需要、だったんですね。

昨年成立した米国の Energy Policy Act of 2005 と大気浄化法の改正で、エタノールの Position が大きく変わったことは、ご承知の通りです。即ち、エタノールを主とする「再生可能燃料」の使用を義務づけ、従来の含酸素素材の添加要件、に替える、という趣旨ですが、これにより、バイオエタノール燃料への税制面での優遇も制度化され、また、12年までに、ガソリンへのバイオメタノールの使用量は 2,839万 Kl まで拡大されることになります。今までの「添加剤」としての需要 (MTBE + エタノール) は、二千万 Kl 以下で、そこが天井、だったのが、「再生可能燃料」になると、とりあえずその天井がかなり上がるし、その天井は、また上がっていく可能性、が見えて来ているんですね。とりあえずの 2,839万 Kl にしても、微妙な量、で、随分大きくも見えるし、現に色々な意味で大きいのですが、米国の巨大な自動車用ガソリン需要から比べると小さい。エタノールは「含酸素化合物」で、ほぼ純粋な炭化水素 (酸素を含まない) である石油系の燃料と比べると、一部は酸化されていますから、単位あたりのエネルギー (酸化反応でもたらされる)は小さいので、いわゆる「燃費」はどうしても劣ります。エタノール単味の自動車用燃料、が当たり前になれば、それを前提とした燃費の向上技術も出てくるかも知れないので、一概には言えないのですが、現在の技術、で考えれば 2,839万 Kl は、米国のガソリン需要の 5% 程度をカバーするに過ぎません。

2,839万 Kl が「小さくはない」のは、米国でのバイオエタノール生産の主原料である、トウモロコシの生産規模との比較において、です。米国は「世界のトウモロコシ王国」で、生産量は年間三億トン弱 (世界の生産の 40% 強)、輸出量は五千万トン前後 (世界の貿易量の 70% 弱) が大雑把な数字です。これから、効率化、は進んで行くと思いますが、現状では、エタノール 1Kl の生産に投入されるトウモロコシは、2.5トン程度、とされていて、2,800万 Kl はトウモロコシ換算七千万トンですから、世界のトウモロコシの貿易量、にそのまま Hit します。ガソリンの世界では、決して大きくないトウモロコシからのバイオエタノール、は、トウモロコシの世界でのバイオエタノール需要として考えると、半端ではない量ですね。これを、「価格」という面から考えると、トウモロコシからのバイオエタノールには、ガソリン (石油) 市場を動かすほどの量的な迫力はありません。また、ガソリン市況 -> トウモロコシ市況、の方は、今までは「代替燃料」としては現実的な生産費から考えると Pay しようがなくて、政策、で「添加剤」(ないしはその延長)で、使用されていたに過ぎないのですから、Total の需給のベースとしては影響するにしても、市況が響く、ではありえませんでした。ところが、石油 (ガソリン) 市況が高騰して、トウモロコシの (現行の) 国際価格をベースにトウモロコシからのバイオエタノール生産が Pay するようになると、トウモロコシの価格は、「一見」石油市況に連動してもおかしくないように見える、ガソリンの市況、は、トウモロコシの市況を大きく動かす要因になり得ます。

( 12 14 2006, 09:03:41 午前 JST ) Permalink
20061213 水曜日 12月 13, 2006

田毎の月


自作農家が自分の目の届く範囲で行う「自足型」(自給自足、ではなく、市場圏の規模は別として、「地域自足型」の) 複合農業、は、なにも「本国」だけでなく、例えばアジアで言えば、XX デルタのようなところには古来からあって、「複合」の組合せは色々ですが、安定した「系」を形成して来ました。アジアの XX デルタ、は、水とのつながりが大きいので、稲作が中心になるのは、ヨーロッパとは違いますし、土地所有の変遷とかも異なりますが、揚子江デルタ、は、歴史も、それ自身の広がりも、市場圏の広がりも、最も大きい系、でしょうか。「歴史の風雪」を経ている分、揚子江デルタは、中国の驚異の発展の中でも、強固に「系」としての命脈を保っているんだと思います。ただ「地面に貼り付いた農家」の経営範囲、の歴史的な限界、はどうしてもありますから、単品毎に「商品生産」と考えると、もともと貼り付いた農家なんかない、New Frontier に展開する「農場」と国際競合すると、これは「規模の経済」であり、なかなか勝ち目がない、も事実です。

米国での「稲作」が、等高線に沿って毎年「畦道」を作っていく「等高線農業」ですよ、の航空写真とか、ご覧になったことがあると思いますが、稲作が「等高線農業」であるのは、米国の Original ではなく、日本の山間地や沢のようなところでかつて見られた「棚田」が、まさに等高線に沿った畦道であり水管理が Focus の「稲作」の、ある意味「自然体」です。しかし、米国の「等高線農業」とは、等高線の密度のケタが違いますから、日本の棚田の一枚が、数アール、とか、アールまでいかないものもあるのに対して、米国では数ヘクタールで、片や「小規模な機械も入らない」田んぼ、と、片や「大規模な機械を入れないと作れない」農場、の差になります。さすがに日本でも、沢の棚田、は多少残っていますが、山村の「山間地の棚田」は (そういう「山村」そのものがなくなっている、もありますが) 姿を消しつつあって、信州の「姨捨」の棚田は、「田毎の月保存会」なんかできてしまって、もう「文化遺産」の世界ですね。

米国型の「大規模農場」が万々歳かというと、そうでもなくて、お砂糖の世界でもあるように、「地域経済」の中での農産品の価格と「国際経済」の中での農産品の価格は、ケタが違うし、「国際経済」を相手にせざるを得ない大規模農場では、競争 (国際競争も、国内での「農場経営」者間での競争も) 激甚ですから、別のご苦労も大きい。生産性は規模の関数であり「本国型」でも (土地の所有権の移転ではなく、借地のような形が主ですが) 集約は進んでいるのですが、これはどちらかというと、「構造改善のための調整」的に進んでいるのに対して、米国では「競争」による弱肉強食的な規模の拡大に進んでいて、むしろそちらの方が進行のテンポは速いかも知れない。「農産物」としての Total の需要市場の規模の拡大、は、精々人口の伸び並にしか期待できないし、かといって「地域経済」の市場をコジ開けよう、も、天下の米国のお力をもってしても限界がある。そこに「活路」がありそうに見えかけているのが、バイオマスエタノールです。

( 12 13 2006, 09:06:18 午前 JST ) Permalink
20061212 火曜日 12月 12, 2006

離島振興


サトウキビと甜菜の生産性較差、は、どこで栽培するか、や、栽培の仕方でも違うのですが、ブラジルの主張によれば、「ブラジルのサトウキビからの砂糖のコストは $180/ton に対して、EU での甜菜からのコストは $710/ton」で、この較差は「植物体そのものの生産性」だけでなく、労賃 (EU とブラジルの賃金単価較差、だけでなく、甜菜は「丁寧に作る」作物であるのに対して、サトウキビは比較的粗放に育つ = 手がかからない、もあります) なんかも含んでいます。日本で考えると、甜菜は北海道、サトウキビは南西諸島 (沖縄県、鹿児島県) なんですが、日本ではむしろ甜菜の方がまだ Cost が安い、とされていて、現実に例の「国境調整金」配分の単価も、南西諸島の方がうんと高い。これは、南西諸島が (国際的に見れば) 必ずしも「サトウキビの適地」とは言えないこと、もありますが、離島での生産であることから、規模の問題や運賃の問題も大きい。まあ、いわゆる「離島振興」としてどうするか、で、あり、他の作物が「離島の農業」としてよりよく成立する、というものではありません。ここは辛いところで、農業政策とはちょっと違う側面から考えていかないと、議論にならない世界です。

日本の国内産糖は、百万トン以下で、世界 (全体で一億五千万トン規模) から見れば小さいんですが、EU は従来二千万トン超えた生産があり、ほぼ「域内自給」を達成していました。フランスやドイツは、EC 域内に輸出までしていたんですね。上記のブラジルの主張、の「素の生産費」から見れば競争力あるわけないのに、「域内自給」が達成されていたのは色んな調整金貼りまくりの成果でもあるのですが、さすがにご時世柄 WTO などでも問題にされて、せめて「国内」で閉じた調整は仕方ないとして、EU 全体での域外ブロックはやめようよ、の方向で、その影響もあって「国際糖価」は値上がり気味です。

ただ、甜菜農業、は、サトウキビのような「植民地型のモノカルチャ農業」と違って、「本国型の複合農業」の一環として組み入れられているので、単純に「コスト高くて、補助金貼りまくりだろ。そんなの止めろよ」と言われて、はいそうですか、とは言えない。例えば、ずーっと甜菜だけ作っている農地、というのはなくて、輪作作物の一つ、として栽培されているので、(場所によるが、馬鈴薯や小麦、豆などとの輪作) 甜菜駄目よ、と言われるとそこに穴があいてしまう。また、甜菜の絞りかすは、家畜の飼料として広く 利用されていて、甜菜の作付けが減ると、畜産業への影響も小さくありません。EU での生産費 $710 で、ブラジルの三倍以上だろ、は、単品で見ればそうかも知れないんですが、実は、畜産とか、他の輪作作物への効用も勘定に入れれば、また数字が変わってくるでしょう。「農業」だけ見てもそうだし、もっといえば農業は「国土利用」の根幹で、そこが大きく変わると、「国土保全」にも影響が出てくる。日本の「コメの生産」が、国際的に見てベラボウにコスト高いだろう、は、そうなんですが、じゃあコメを全面的にやめたらどうなるか。水田の「水の調整機能」は非常に大きいんで、それが失われると、洪水が頻発するのは避けられません。EU で甜菜止めるとどういう天災が起きるのか、とか駄洒落はさておき、その対策には大変な お金がかかる、という別のコスト計算でも、日本でのコメの生産、の意義を説明することは可能なんですが、旧 EU にせよ、日本にせよ、伝統的な中小自作農家があって、彼らが長年シコシコとやっている「土地利用」は、その地域の自然と密接に結びついているんで、そう簡単に大きく変えられるものではありません。

( 12 12 2006, 09:01:15 午前 JST ) Permalink
20061211 月曜日 12月 11, 2006

Singapore Botanical Garden


「植民地主義の時代」の Keyword というか、大きな動機、は、サトウキビに限りませんが、「熱帯性の植物からの産物」への欲求で、一番最初は、胡椒のような重量あたりの価格の高い、香辛料系、の「輸入ルートの開拓」 = 大航海時代ですが、それが、現地でのプランテーション経営、に発展して行く。ゴムしかり、コーヒーしかり、あるいは阿片もそうだったのかも知れませんが、その中でもサトウキビ、は最右翼の「熱帯産物」です。シンガポールには、市街の中心にほど近いところに、今でも 50ha を超える面積の立派な植物園があって、「うーん、さすが大英帝国だ。植民地にもこんな立派な文化施設を運営していたんだ」とか感心している人もいるんですが、何のことはない、植物園、は今の製造業で言えば、Pilot Plant みたいなもので、アマゾン流域から「盗みだしてきたゴムの種子」を、ここで選抜して、育苗して、海峡植民地に送り出すのような (正確には、「盗み出したゴムの種子」は最初は今のスリランカの植物園で栽培された)「植民地経済」の中核施設だったんですね。自国の各植民地に「植物園ネットワーク」を展開して、植民地経済の起点にした大英帝国は偉かった、には、まあ異議ありませんが...

サトウキビの現在の栽培種は、ニューギニアあたりが原産、と言われています。ブラジルのサトウキビ栽培も歴史が長いのですが、なんと言っても「衰退植民地王国」ポルトガルの比較的穏和な植民地だし、独立も早かったから、西インド諸島でのアフリカからの奴隷労働力の大量導入による大プランテーション、という やりたい放題の「植民地経営」と比較すると、消費地までの距離の問題もありますが、優勢、とまではいかなかった。それがよかった、と言いますか、「製糖工場主と工場周辺の契約農民」みたいな関係は、どっちが優位とかはあるにしてもいわば一般的な「持ちつ持たれつ」の関係であり、Flexible なのに対して、 「やりたい放題の奴隷農場システム」は、その強制力である「植民地帝国」が崩壊すると、同時に「生産システム」まで崩壊してしまいます。不自然なモノカルチャー農業、は、一旦崩壊すると土地も荒れるし、なかなか再建も難しい。気候条件としては、特に気温では、優位とは言えないブラジルですが、製糖工場資本が「製糖 = バイオマスエタノール資本」にうまく成長したし、「製造業」の原料確保、という意味では、降雨量がコンスタントにあって、(冬場には糖度は落ちるのですが) 周年栽培が可能、は大きなメリットでもありますから、ブラジルのバイオマスエタノールの(少なくとも当面の) 優位の背景、を構成しています。

一方の砂糖原料の雄である甜菜は、面白いことに「反植民地的起源」と言いますが、今の甜菜とは比較にならないほど糖度の低いものが、野菜として栽培されていて、それの改良種、が今の甜菜なのですが、品種改良が進むきっかけになったのはナポレオン戦争の大陸封鎖で、植民地からの (サトウキビ起源の) 砂糖が入ってこなくなったから、と言われています。「パンがなければお菓子を食べれば」のマリー・アントワネットの姪を皇后にしたので、やっぱりお砂糖がないのは困るから、なのかどうかは知りませんが、十九世紀半ばには、「甜菜からの製糖工業」がヨーロッパ大陸で確立し、その後も「戦争」が断続的する中で、甜菜の糖度を高める品種改良が進みます。

( 12 11 2006, 09:00:51 午前 JST ) Permalink
20061208 金曜日 12月 08, 2006

Biomas Ethanol @Brazil


百円と二百五十円のお砂糖が、人為的に同じ百五十円で売られている、は、ヒドイといえばヒドイ話なのですが、まあ「農産物の貿易」ではそんなに突飛な話ではありません。(お砂糖でちょっと極端なのは、やはり「嗜好品」だから、もあるんでしょうね。やはり「嗜好品」であるタバコやお酒の税金、と、共通点があって、それが主として一般財源に充てられるか、国産農家保護に充てられるかの違い、と見ることも出来ると思いますが) しかし「砂糖原料の輸出国」にしてみれば、折角「お日様の恵み」もあって生産性が高い、が、逆に国際 (輸出) 糖価は一向に上がらない要因でもある。相場にもよりますが、「(相対的に) 安い生産費」でもさすがに Pay しない水準、は珍しいことではなく、輸出国でも、逆国境調整、とでも言いますか、「国内消費される砂糖には課税して、その分を輸出補助金として付ける」で、砂糖農業を保護したり、も起きる。輸入国でも輸出国でも補助金漬け、では、「国際糖価」は、なかなか上がりようがない、それなら、エタノール生産に回してしまえ (これも、特に初期には「補助金」付けないと、エタノール生産に必要な投資が賄えない、もあるのですが、輸出補助金のような「泥沼」ではなく、うまくいけば「一過性」) は、Reasonable です。

「農業対策」や National Security 対策、でもあった (というか、それが多分メインだった) ブラジルでのサトウキビからのバイオマスエタノール、ですが、ここまでは結構「茨の道」で、ようやく日の目を... が正確なところでしょうか。75年から Start した、ブラジルのバイオマスエタノールは、80年代前半まで、「ガソリンに混ぜる」では間に合わない、100% エタノールに近い燃料でも立派に走る車、を投入しないと、こなせない生産量に達します。ここまでは「順調」だったのですが、「混ぜるでは間に合わない」がネックで、そこを解消するために、ブラジル政府は80年代中頃には、「新車は 100% エタノール (専用) 車で」を強力に進めま す。(当時は、エンジン = 燃焼技術の問題、というより、エタノールの無水化が困難だったから、「水対策」としての専用エンジン、の意味が大きかった) 当時の原油価格の水準は、100% エタノールが「割安」とまでは言えないにしても、そろそろ引き合いそうな水準、に対して、糖価の低迷が酷かったので、その方向に行ったわけですが、それが、80年代後半に、原油価格は半値になる、糖価は持ち直す、の「大逆転」が起きます。それでも「ガソリンでは走れない車」を鳴り物入りで進めた以上、バイオマスエタノールは供給 を続けさせざるを得ない。大変な持ち出し、になるし、今度は「新車はガソリンメインのエンジンで」に戻す、とかドタバタでした。そこから、エタノールの無水化技術や Flex 燃料 (100% エタノールでも、ガソリンメインでも、どちらでも走る) 車の普及があり、原油価格は回復して、もうそう簡単には $40/b 以下、にはなりそうもない。そろそろ、盤石、でしょうか。

「茨の道」を反映して、90年代中頃までは、ブラジルの「砂糖 & エタノール政策」は、厳重な国家統制と、バイオマスアルコール燃料の独占権を与えられた Petrobras = 名前の通りの国営石油会社の負担、を含めた、重い国家財政負担に支えられてきました。しかし、それ以降、生産割当制度も廃止されて、保証価格制度もなくなり、Petrobras への独占権も撤回されて、「バイオマスエタノール」は、今では「普通の Business」として回っている。これは、今まで注ぎ込んだ投資、の効果でもあるし、ブラジルのサトウキビ生産の「恵まれた条件」大きな要因ですから、正確には「ブラジル一国的に成り立っている」に過ぎないんですが、ブラジルでの成功、と、原油価格の高騰、で、バイオマスエタノールには注目が集まっています。

( 12 08 2006, 08:59:47 午前 JST ) Permalink
20061207 木曜日 12月 07, 2006

国境調整


もう一つの「人造石油」は、植物起源の、バイオマス燃料です。主力は、砂糖や澱粉の発酵による「バイオマスエタノール」であり、これはガソリン代替 (100% エタノール、や、100% ではなくてもエタノール主体のもの、と、5% なり 10% なり、日本では 3% とか言っていますが、エタノールを「混ぜる」という程度のモノ、がありますが) です。その他に、大豆油などの植物油を変成してディーゼル油に加える、も進められています。

植物起源の「人造石油」も、二次大戦期の日本の「松根油」のように、今となってはマンガ、も含めて、戦争遂行のための技術、という側面もあって、例えば砂糖のアセトン = ブタノール発酵、は、一次大戦期の爆薬の溶剤のための技術だったのが、割に長く工業的にも使われていたりしましたが、バイオマスエタノールのテクノロジーは、根っ子のところは、有史以前からある「お酒の醸造」ですから、いわば「人類最古のテクノロジー」ですね。バイオマスエタノールを自動車燃料に、の先進国は、ブラジルで、ブラジルでは、73年の石油ショックの直後から、国を挙げて積極的に取り組んできました。当時のブラジルは、国内に殆ど石油産出がなくて (現在は、海底油田の開発が進んでほぼ自給可能。これも価格効果、ですね) やはり National Security が大きな動機です。ただ、もう一つ「大きな動機」と考えられるモノとして、元来、砂糖の「大輸出国」であったブラジルが、先進国での砂糖消費の停滞から来る、糖価の下落に悩んでいて、一種の「農業政策」としての「砂糖の需要開拓」の意味もあった、は否めません。農産物の価格、は、別に砂糖に限らず、何でもではありますが、各国の農業政策によって「歪められている」。これも広義の National Security Matter ではあるし、特に旧 EU や日本では「地域振興」の問題もあるし、もっと下世話には、農業従事者の「票」というか選挙対策、もありますから、それをキレイに分解する、は、難しいのですが、砂糖の価格、は中でもその歪みの大きい世界です。砂糖、というか、「甘み」への嗜好は、食の多様化が進むと減退してくるものですし、特に最近のように「健康ブーム」とかあると、目の敵にされる面もあって、かつてのような「花形」であることを喪失しているのですが、やはり「かつての花形商品」という伝統、もあって、それぞれの国の「産地」でも重要作物、ですから、各国とも「自給政策」をなかなか放棄できない。砂糖の原料、は、熱帯地方のサトウキビと温帯地方の甜菜 (砂糖大根) ですが、いわゆる「南北問題」でいうと、主として甜菜からの砂糖の生産を行っている「北側諸国」の利害 (南側の適地でのサトウキビの「植物としての生産性」が高い) は一致していますから、「保護政策」で結束する。需要が伸びない、もありますが、そこが「貿易 Item としての糖価」の低迷の根源です。

各国での「砂糖原料農業」への保護措置は、砂糖原料農家への「補助金」と、いわゆる「国境調整」で行われるんですが、これがなかなか強烈、というか... 我が国、は、完全な自給、ではなく、Total の国内の砂糖需要 230万トン前後 (最近は 220万トン、に近い) に対して、国内原料 95万トン、程度の「部分自給」が政策です。国境調整、というと北方四島帰ってくるならいいんですが、この場合は、輸入の原糖に高額の税金を掛けて、それを原資に、国産糖に「価格調整金」を支払うシステムなので、「原資」を稼がないといけませんから、過半量が「輸入」であるのは仕方がないんですね。さて、これらを束ねるいわゆる「砂糖勘定」の平成 16年度決算 (17年度分、は、こういうまとまった形になっていないので 16年度分を引用) を見ると、「国内産糖交付金」の額は、968億円、で、これを「国内産糖」の数量で割ると、KG あたりほぼ百円、ですね。さすがにその分を全額輸入原糖への課税でまかなえているか、というと、そうではなくて、その 部分は 560億円、これは、輸入原糖起源の精糖の数量で割ると、KG あたり五十円、に相当します。(差額は、一種の隠れ財政赤字、なのかも知れませんが「砂糖勘定」の繰越損失に算入) 分かりやすく言ってしまえば、例えばスーパーさんの目玉商品、なら 1KG の小袋で 150円のお砂糖、は、国産糖が原料なら、実質 250円、輸入糖が原料なら実質 100円、それを「国境調整」で、同じ 150円で売っている、が、姿です。

( 12 07 2006, 09:22:08 午前 JST ) Permalink
20061206 水曜日 12月 06, 2006

Gas To Liquid


「石炭液化」や、石炭以外の未利用 (あるいは利用度の低い) 炭化水素資源、Oil Sand や油母頁岩、Orinoco Heavy の利用 (それも「軽質油への分解」の形での利用) のネックの一つだった「価格の壁」は、$60/b だ $80/b だ、という話になると、かなりハードルが低くなります。石炭液化のテクノロジーは、80年代にかなり Study が進んで、パイロットプラントレベルでは、そこそこ引き合いそうな成果が出ているんですが、その後原油価格が低迷した時期があって、実用・大型プラント、というところへは進みませんでした。今なら「かなり行けそう」は、間違いないんですが、それでも「実用かつ大規模」となると、パイロットプラントで順調に運転できたからと言って必ず、というものではないし、投資規模も随分大きくなりますから、おいそれとは行かない。宇部興産さんが「石炭ガス化プロセス」に出られたのは、もともとの原点が、あの地区で石炭掘っていた企業、ですから、ある種の「思い入れ」も後押ししているし、ケミカル原料であれば、投資規模的にもそんなに大きなものにはならない。当時宇部興産の方に伺ったんですが「確かに大きな Risk だけど、結局動かない、という最悪の Case でも、興産の持っているゴルフ場子会社を売却すれば、チャラになる。別にそういう計算で投資規模決めたという訳ではないが、投資する踏ん切り付けるのに、背中を押した、はあるかも」と言って居られました。技術的には順調に稼働して、ただ、その後原油価格が低落したので、「思ったほど儲からなかった」はあるでしょうが、そのご決断に「ゴルフ場バブル」めいたものが、後押しした、は、まあバブルも何の効用もなかったわけではないですね。

しかし、「大規模な、文字通りの石炭液化」となると、お金のケタも Risk の大きさも、想像を絶する。SASOL のような、差し迫った National Security という、いわばお金に換算できない動機、でもないと、採算的なハードルが低くなった、は事実としても、純経済的な Feasibility で Own Risk で出ますか、は、難しい。日本に大きな露天掘りの炭田でもあれば、やっているんだと思いますが、そうではないし、採掘コストの安そうな炭田のある国には、お金やテクノロジーが乏しいか、そんな Risk 取らなくても、何とかなるような資源的な余裕がある。なかなか、すぐには実現しない (やる、と決めてから動くまで、だって五年はかかるでしょうし) は致し方ないところです。

技術的な Risk が小さく、投資規模もそれほどでもない「人造石油」としては GTL = Gas To Liquid があります。天然ガスからの軽質油製造、は、天然ガスそのものを利用するには、産地で天然ガスを超低温液化して、それを高価な LNG 船で消費地に運んで、消費地でも受け入れ設備に投資が必要で、という輸送・貯蔵面での Cost 部分が、産地で軽質油に加工すれば、うんと軽減されるところが有利です。昨年、 日揮さんが受注されたカタールの GTL プラント (Shell さんの事業) は、その本格的で大規模な実施 (第一期で 14万b/d = 日本の石油需要の 3% 弱相当) ですが、中東での天然ガスのケミカルへの利用 (例えばメタノールの製造) での Cost から類推すれば、カタール GTL の採算点は Arabian Light $40/b 前後、とかあるいはもっと下ではないか、と考えられ、計画の始まった頃は「ギリギリの採算」だったとしても、今となっては確実に儲かる事業でしょうね。GTL の原料である「天然ガス」は、今でも旺盛な需要があり、かつ (石炭や Oil Sand だって無尽蔵という訳ではありませんが) 世界的に見ればより「有限性」の高い資源ですから、GTL が石油代替を果たせるほどの供給余力があるかというと Negative ですが、「人造石油」が、少なくとも Cost 面では、十分「天然石油」を代替するところまで来ている有力な 例証です。

( 12 06 2006, 08:55:43 午前 JST ) Permalink
20061205 火曜日 12月 05, 2006

It's Good to Be Chairman


本日、先月ちょっとご紹介した東京大学での弊社会長スコット・マクニーリの「講演会」を覗きに行って来ました。会場は工学部の「新二号館」と案内されていて、「新二号館」って何だろう、にも、ちょっと興味があったんですが、従来の「工学部二号館」の安田講堂に面したファサード部分を残して (あの辺りの「クラシックな景観」- いわゆる「内田ゴシック」を維持する為なんでしょうね) 裏側に「新二号館」があるのですが、その高層部分が (旧) 二号館に覆いかぶさるような形で張り出している、不思議な建物です。質感がないので、ちょっと Image が湧きにくいと思いますが、模型のページをご紹介しておきます。

講演会場は、300席近い講義室だったんですが、満席の上に壁際にもびっしり詰めて頂く盛況で、御礼申し上げます。(小宮山先生に「本来安田講堂なんだけど、丁度学会とかち合って」とご挨拶頂いたんですが、ありがたいことにそれほど違和感がありませんでした) 電気・情報系の話題、にしては、女性 Audience が多いですね、をお知り合いに申し上げたら、通訳なし、だと、女性の割合が増える、なんておっしゃってましたけど、通訳なしでも、笑いが頂きたいところで、ちゃんと頂けるのは「さすがは東大」として、笑い声には、頭数の Ratio より女声が優勢だったかも知れません。お話させて頂いた内容は、Sun の人間にとっては「お馴染み」で、標題にした、「CEO は四六時中、四方八方からタマが飛んでくる。その点、Chaiman 専任はいいよ。Golf したり、こうやって古くからのお客さんでお話させてもらったり」と、場所柄もあるんでしょうが「オレはダサめの Business School 系だけど、仲間の Andy や Bill Joy は皆さんの世界で Academician としてもきっと大成した人間だ。その彼らを Business の世界に引き込んでしまったんだけど、彼らにとっても自分の Concept が実現していくのは楽しかっただろうし、Andy も Bill Joy もSmart で本当にいいヤツだから、自分も一緒に頑張って来られたんだよ。皆さんも是非」くらいが新味なのですが、さて学生諸君には、どう受け取っていただいたでしょうか。席上でスコットも申し上げたように、東京大学は Sun の日本での最初のお客様であり、その後も、新しい製品の Kick Off User というか、例えば Sun の初めての「大型サーバ」である E10000 は、発表の半年以上前から、Test User として使って頂いたり、で、随分お世話になっています。多少でもお役に立てていたら、嬉しいんですけど。

( 12 05 2006, 09:11:28 午後 JST ) Permalink Comments [1]