Gas To Liquid
「石炭液化」や、石炭以外の未利用 (あるいは利用度の低い) 炭化水素資源、Oil Sand や油母頁岩、Orinoco Heavy の利用 (それも「軽質油への分解」の形での利用) のネックの一つだった「価格の壁」は、$60/b だ $80/b だ、という話になると、かなりハードルが低くなります。石炭液化のテクノロジーは、80年代にかなり Study が進んで、パイロットプラントレベルでは、そこそこ引き合いそうな成果が出ているんですが、その後原油価格が低迷した時期があって、実用・大型プラント、というところへは進みませんでした。今なら「かなり行けそう」は、間違いないんですが、それでも「実用かつ大規模」となると、パイロットプラントで順調に運転できたからと言って必ず、というものではないし、投資規模も随分大きくなりますから、おいそれとは行かない。宇部興産さんが「石炭ガス化プロセス」に出られたのは、もともとの原点が、あの地区で石炭掘っていた企業、ですから、ある種の「思い入れ」も後押ししているし、ケミカル原料であれば、投資規模的にもそんなに大きなものにはならない。当時宇部興産の方に伺ったんですが「確かに大きな Risk だけど、結局動かない、という最悪の Case でも、興産の持っているゴルフ場子会社を売却すれば、チャラになる。別にそういう計算で投資規模決めたという訳ではないが、投資する踏ん切り付けるのに、背中を押した、はあるかも」と言って居られました。技術的には順調に稼働して、ただ、その後原油価格が低落したので、「思ったほど儲からなかった」はあるでしょうが、そのご決断に「ゴルフ場バブル」めいたものが、後押しした、は、まあバブルも何の効用もなかったわけではないですね。
しかし、「大規模な、文字通りの石炭液化」となると、お金のケタも Risk の大きさも、想像を絶する。SASOL のような、差し迫った National Security という、いわばお金に換算できない動機、でもないと、採算的なハードルが低くなった、は事実としても、純経済的な Feasibility で Own Risk で出ますか、は、難しい。日本に大きな露天掘りの炭田でもあれば、やっているんだと思いますが、そうではないし、採掘コストの安そうな炭田のある国には、お金やテクノロジーが乏しいか、そんな Risk 取らなくても、何とかなるような資源的な余裕がある。なかなか、すぐには実現しない (やる、と決めてから動くまで、だって五年はかかるでしょうし) は致し方ないところです。
技術的な Risk が小さく、投資規模もそれほどでもない「人造石油」としては GTL = Gas To Liquid があります。天然ガスからの軽質油製造、は、天然ガスそのものを利用するには、産地で天然ガスを超低温液化して、それを高価な LNG 船で消費地に運んで、消費地でも受け入れ設備に投資が必要で、という輸送・貯蔵面での Cost 部分が、産地で軽質油に加工すれば、うんと軽減されるところが有利です。昨年、 日揮さんが受注されたカタールの GTL プラント (Shell さんの事業) は、その本格的で大規模な実施 (第一期で 14万b/d = 日本の石油需要の 3% 弱相当) ですが、中東での天然ガスのケミカルへの利用 (例えばメタノールの製造) での Cost から類推すれば、カタール GTL の採算点は Arabian Light $40/b 前後、とかあるいはもっと下ではないか、と考えられ、計画の始まった頃は「ギリギリの採算」だったとしても、今となっては確実に儲かる事業でしょうね。GTL の原料である「天然ガス」は、今でも旺盛な需要があり、かつ (石炭や Oil Sand だって無尽蔵という訳ではありませんが) 世界的に見ればより「有限性」の高い資源ですから、GTL が石油代替を果たせるほどの供給余力があるかというと Negative ですが、「人造石油」が、少なくとも Cost 面では、十分「天然石油」を代替するところまで来ている有力な 例証です。
( 12 06 2006, 08:55:43 午前 JST ) Permalink

