離島振興
サトウキビと甜菜の生産性較差、は、どこで栽培するか、や、栽培の仕方でも違うのですが、ブラジルの主張によれば、「ブラジルのサトウキビからの砂糖のコストは $180/ton に対して、EU での甜菜からのコストは $710/ton」で、この較差は「植物体そのものの生産性」だけでなく、労賃 (EU とブラジルの賃金単価較差、だけでなく、甜菜は「丁寧に作る」作物であるのに対して、サトウキビは比較的粗放に育つ = 手がかからない、もあります) なんかも含んでいます。日本で考えると、甜菜は北海道、サトウキビは南西諸島 (沖縄県、鹿児島県) なんですが、日本ではむしろ甜菜の方がまだ Cost が安い、とされていて、現実に例の「国境調整金」配分の単価も、南西諸島の方がうんと高い。これは、南西諸島が (国際的に見れば) 必ずしも「サトウキビの適地」とは言えないこと、もありますが、離島での生産であることから、規模の問題や運賃の問題も大きい。まあ、いわゆる「離島振興」としてどうするか、で、あり、他の作物が「離島の農業」としてよりよく成立する、というものではありません。ここは辛いところで、農業政策とはちょっと違う側面から考えていかないと、議論にならない世界です。
日本の国内産糖は、百万トン以下で、世界 (全体で一億五千万トン規模) から見れば小さいんですが、EU は従来二千万トン超えた生産があり、ほぼ「域内自給」を達成していました。フランスやドイツは、EC 域内に輸出までしていたんですね。上記のブラジルの主張、の「素の生産費」から見れば競争力あるわけないのに、「域内自給」が達成されていたのは色んな調整金貼りまくりの成果でもあるのですが、さすがにご時世柄 WTO などでも問題にされて、せめて「国内」で閉じた調整は仕方ないとして、EU 全体での域外ブロックはやめようよ、の方向で、その影響もあって「国際糖価」は値上がり気味です。
ただ、甜菜農業、は、サトウキビのような「植民地型のモノカルチャ農業」と違って、「本国型の複合農業」の一環として組み入れられているので、単純に「コスト高くて、補助金貼りまくりだろ。そんなの止めろよ」と言われて、はいそうですか、とは言えない。例えば、ずーっと甜菜だけ作っている農地、というのはなくて、輪作作物の一つ、として栽培されているので、(場所によるが、馬鈴薯や小麦、豆などとの輪作) 甜菜駄目よ、と言われるとそこに穴があいてしまう。また、甜菜の絞りかすは、家畜の飼料として広く 利用されていて、甜菜の作付けが減ると、畜産業への影響も小さくありません。EU での生産費 $710 で、ブラジルの三倍以上だろ、は、単品で見ればそうかも知れないんですが、実は、畜産とか、他の輪作作物への効用も勘定に入れれば、また数字が変わってくるでしょう。「農業」だけ見てもそうだし、もっといえば農業は「国土利用」の根幹で、そこが大きく変わると、「国土保全」にも影響が出てくる。日本の「コメの生産」が、国際的に見てベラボウにコスト高いだろう、は、そうなんですが、じゃあコメを全面的にやめたらどうなるか。水田の「水の調整機能」は非常に大きいんで、それが失われると、洪水が頻発するのは避けられません。EU で甜菜止めるとどういう天災が起きるのか、とか駄洒落はさておき、その対策には大変な お金がかかる、という別のコスト計算でも、日本でのコメの生産、の意義を説明することは可能なんですが、旧 EU にせよ、日本にせよ、伝統的な中小自作農家があって、彼らが長年シコシコとやっている「土地利用」は、その地域の自然と密接に結びついているんで、そう簡単に大きく変えられるものではありません。
( 12 12 2006, 09:01:15 午前 JST ) Permalink

