20061207 木曜日 12月 07, 2006

国境調整


もう一つの「人造石油」は、植物起源の、バイオマス燃料です。主力は、砂糖や澱粉の発酵による「バイオマスエタノール」であり、これはガソリン代替 (100% エタノール、や、100% ではなくてもエタノール主体のもの、と、5% なり 10% なり、日本では 3% とか言っていますが、エタノールを「混ぜる」という程度のモノ、がありますが) です。その他に、大豆油などの植物油を変成してディーゼル油に加える、も進められています。

植物起源の「人造石油」も、二次大戦期の日本の「松根油」のように、今となってはマンガ、も含めて、戦争遂行のための技術、という側面もあって、例えば砂糖のアセトン = ブタノール発酵、は、一次大戦期の爆薬の溶剤のための技術だったのが、割に長く工業的にも使われていたりしましたが、バイオマスエタノールのテクノロジーは、根っ子のところは、有史以前からある「お酒の醸造」ですから、いわば「人類最古のテクノロジー」ですね。バイオマスエタノールを自動車燃料に、の先進国は、ブラジルで、ブラジルでは、73年の石油ショックの直後から、国を挙げて積極的に取り組んできました。当時のブラジルは、国内に殆ど石油産出がなくて (現在は、海底油田の開発が進んでほぼ自給可能。これも価格効果、ですね) やはり National Security が大きな動機です。ただ、もう一つ「大きな動機」と考えられるモノとして、元来、砂糖の「大輸出国」であったブラジルが、先進国での砂糖消費の停滞から来る、糖価の下落に悩んでいて、一種の「農業政策」としての「砂糖の需要開拓」の意味もあった、は否めません。農産物の価格、は、別に砂糖に限らず、何でもではありますが、各国の農業政策によって「歪められている」。これも広義の National Security Matter ではあるし、特に旧 EU や日本では「地域振興」の問題もあるし、もっと下世話には、農業従事者の「票」というか選挙対策、もありますから、それをキレイに分解する、は、難しいのですが、砂糖の価格、は中でもその歪みの大きい世界です。砂糖、というか、「甘み」への嗜好は、食の多様化が進むと減退してくるものですし、特に最近のように「健康ブーム」とかあると、目の敵にされる面もあって、かつてのような「花形」であることを喪失しているのですが、やはり「かつての花形商品」という伝統、もあって、それぞれの国の「産地」でも重要作物、ですから、各国とも「自給政策」をなかなか放棄できない。砂糖の原料、は、熱帯地方のサトウキビと温帯地方の甜菜 (砂糖大根) ですが、いわゆる「南北問題」でいうと、主として甜菜からの砂糖の生産を行っている「北側諸国」の利害 (南側の適地でのサトウキビの「植物としての生産性」が高い) は一致していますから、「保護政策」で結束する。需要が伸びない、もありますが、そこが「貿易 Item としての糖価」の低迷の根源です。

各国での「砂糖原料農業」への保護措置は、砂糖原料農家への「補助金」と、いわゆる「国境調整」で行われるんですが、これがなかなか強烈、というか... 我が国、は、完全な自給、ではなく、Total の国内の砂糖需要 230万トン前後 (最近は 220万トン、に近い) に対して、国内原料 95万トン、程度の「部分自給」が政策です。国境調整、というと北方四島帰ってくるならいいんですが、この場合は、輸入の原糖に高額の税金を掛けて、それを原資に、国産糖に「価格調整金」を支払うシステムなので、「原資」を稼がないといけませんから、過半量が「輸入」であるのは仕方がないんですね。さて、これらを束ねるいわゆる「砂糖勘定」の平成 16年度決算 (17年度分、は、こういうまとまった形になっていないので 16年度分を引用) を見ると、「国内産糖交付金」の額は、968億円、で、これを「国内産糖」の数量で割ると、KG あたりほぼ百円、ですね。さすがにその分を全額輸入原糖への課税でまかなえているか、というと、そうではなくて、その 部分は 560億円、これは、輸入原糖起源の精糖の数量で割ると、KG あたり五十円、に相当します。(差額は、一種の隠れ財政赤字、なのかも知れませんが「砂糖勘定」の繰越損失に算入) 分かりやすく言ってしまえば、例えばスーパーさんの目玉商品、なら 1KG の小袋で 150円のお砂糖、は、国産糖が原料なら、実質 250円、輸入糖が原料なら実質 100円、それを「国境調整」で、同じ 150円で売っている、が、姿です。

( 12 07 2006, 09:22:08 午前 JST ) Permalink
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