20060210 金曜日 2月 10, 2006

Hammer vs Prius


「自家用乗用車の二酸化炭素排出」では典型的に顕れていますが、テクノロジーやマーケティング (自動車メーカサイド) と、クルマの購買者であり、クルマを使用して実際に二酸化炭素を排出するユーザサイド、の「排出責任」の関係はなかなか微妙です。(絡んでくるものとして一般経済情勢、や「政策」も大きい要素、です)

自動車産業(というか、エネルギー関連産業全体)が、「石油の値段」によって Focus を変えるのは、まあ当たり前の話で、石油の値段、をちょっと復習しておきましょう。古い話をすれば、石油の価格は「第一次石油危機」('73 の第四次中東戦争、が契機。原油価格で、バーレル二ドル程度から十数ドルに)、「第二次石油危機」('79 のイラン革命が契機。バーレル四十ドル近くに) と二段階で大幅に高騰し 80年代前半は、三十ドル台で推移します。これが 86年の年初に急落して、半分以下になってしまう。途中、イラクのクウェート侵攻で瞬間的に大きく値上がりしますが、90年代一杯まで凸凹はあっても、概ね「原油は十ドル台」でした。
86年の急落、は、何かトピックがあった、というより、OPEC 産油国の政情が相対的に安定していてこと、原油価格の高騰を受けて開発が進んだ非 OPEC 国の生産が本格化したこと、や石油以外のエネルギー源への代替が進んだこと、かつ、消費国での「省石油」も進展して石油需要が停滞したことで生じた需給ギャップを、生産制限で対応していたのが支えきれなくなって、という複合的な要因が一気に表面化した、だと思いますが、これを受けて、オイルショックで「世の中変わった」の針が逆に回りだした、はあります。油の値段がドンドン上がって行く世の中ではあり得なかった、SUV のような車が一世を風靡する、は、石油の価格が下がったからこそ、で、 これからはエコロジーの時代だ、アウトドアライフだ、SUV だ、は、おいおい排気ガス撒き散らして「自然」の中に乱入する、のどこがエコロジーだよ、とびっくりしましたが、時代、ですね。欧州はもともと「大衆的デカ車」の伝統がないからそうでもなかったけれど、米国は「抑圧されていたデカ車への欲望」が復活した、日本は「隣の車が小さく見えまーす」がお国柄ですから、まあ米国寄りなのでしょう。

SUV には新しいテクノロジーはいらない、というか、軍用車、として確立された テクノロジーをスペックダウンして持ってくればいいわけで、欧米のメーカーにとってはある意味得意技の応用問題、ですね。日本でも初期のパジェロなんか軍用テーストがありますし、欧州勢も東西冷戦の終結で需要のなくなった軍用車両 Line をまんま民間市場に持ち込んで、本国ではそう人気は出なかったようですが、なぜか 世田谷のような道の狭いところにも、ランドローヴァーやゲレンデヴァーゲンをあふれ返らせていました。こういう「安易なお金儲け」のバカ受けを見ていると、軍用車とは無縁なホンダさんだって、軍用テーストとは違うマイルドな SUV 作ろう、とお考えになるのは当然で、どうもそういう車を作る自動車メーカさんが悪い、というよりユーザ側の「欲望」の方にも責任がないとは言えないような気がします。弊社もあんまりエラソーなことは言えなくて、何年か前の Java Technology Comference で、景気付けに都心で Hummer 走り回らせる、という「暴挙」をやって、何人かの方に、会場で「あれはないだろう」とお叱りを頂いたことがあります。(主に、 イラクで走り回ってる車をコトサラに東京に持ち込むな、でしたが、シュワちゃんがボロクソ言われてるの知らないわけじゃないだろ、も)

こういう風潮と低位安定の原油価格の中で、「本気のハイブリッド車」や「魅力のある小型車」の開発、ここは本格的にお金を掛けた総合的なテクノロジーが必要なところだと思いますが、そこを先駆けてやって居られたトヨタさんは、先見の明がある、というか、何も原油価格の大幅高騰を確信して居られた訳ではなくて、「そうなるかも知れない」というバランス感覚、なのでしょうが、お金儲けだけでなく、ちゃんと「お金の使い方」が分かってる経営、を感じます。ユーザの側だって、選択肢が与えられないとリーゾナブルな行動は取れない。ハイブリッド車は素晴らしい、にしても、開発費まで乗っけた天文学的な Pricing なら選択肢にならないし、小型車はエコですよ、と言われても、軽自動車に毛の生えたようなイモ車じゃ食指が動きません。トヨタさんは、昔から「どんなに地球に優しいテクノロジーを開発したところで、それをお客さんが選択されなければ、地球に優しい、は実現しない」を言われていて、そこは大事なところだと思います。トヨタさんが世に問うたテクノロジーやコンセプトが、世の中で「有力な選択肢」になれば、当然他社さんだって、すぐに、か、何年か遅れて、かは別として、そこに参入せざるを得ない、他社が参入されて競争が激しくなっても、それでその市場が分厚くなれば、「トップランナーである自社」へのリターンは大きくなる、という自信もホノ見えるところがニク過ぎる、と言えないこともありませんが...

( 2 10 2006, 10:38:48 午前 JST ) Permalink
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