i960 vs AMD29K
お古い話を書くと「昔バナシ好き」の方から「ご指摘」を頂くんですが、先週、AMD さんは「新しい Intel」には見向きもしないで、が得意技、と書いたことに、そうでもないんじゃない、i960 vs AMD29000 はどうなの、という Mail を頂きました。i960 も AMD29K も、Berkeley RISC という意味で SPARC の兄弟分ですから、お古い話ついでに触れておきます。
i960 (86年) は、当初は i432 の後継、というか、Ada エンジンとして構想され、想定されていた用途は軍用とフォールトトレラントだったんですが、FT の方は、i960 の開発中にポシャッてしまって、結局は CPU というよりマイクロコントローラとしてデビューします。(軍用では、「本来の i960の機能」が Full に使われたらしい) Intel さんとしては「将来の CPU」としては、i960 より i860 が選択だった訳ですが、i960 を選んでいれば、違った世の中、があったのかも知れません。マイクロコントローラとしての i960 は、それなりの活躍をして、AMD29K と市場 (例えばプリンタ) を争うのですが、Intel さんが DEC さんから StrongARM を獲得したところで、役割を終え、i960 チームは、本来の CPU 開発チームとして Pentium Pro のチームに合流します。Pen Pro の RISC の香り、は、i960 譲り、ということができるでしょう。
AMD29K (88年) は、もともとコントローラ指向で、言ってみれば「コントローラとしての i960 対抗」で開発されてその市場で大きな支持を受け、それが徐々に拡張されて、最終版では、まんま RISC CPU として使ってもナカナカ優秀、というところまで展開した、i960 とは逆の道筋をたどった石、です。SPARC は、割に Original の Berkeley の Original にこだわっていたんですが、AMD29K は Flexible かつ Smart に Berkeley RISC を拡張した、みたいなところがあって、「Sun も David Ditzel なんかに SPARC やらせるから跳べないんだよ、少しは AMD29K 見習ったら」なんて言われましたね。Transmeta の創設者である David Ditzel 氏は、Berkeley で Patterson 先生のお弟子さんで、最初の RISC Paper (RISC という言葉の始まり、に過ぎない、という言い方もありますが) である The Case for the Reduced Instruction Set Computer (80年) の Co-Author (80年当時はベル研) ですからエラい人なんですが、87年から Sun にいて、自分の知っている頃はロシアに CPU 設計 Team 作るんだ、とかやってました。Ditzel さんは、その後 VLIW に行ってしまうんですから、あんまり「こだわり」なんかないようにも見えるんですが、大きく跳ぶことは得意でも、こうすればうまく行くんじゃない、のような「拡張」的な跳び方は向かない、とかはあるのかも知れませんね。
AMD29K は、95年末に急遽開発中止、になって、一時 AMD さんは Enbedded のビジネスから完全に撤退、で AMD29K のファンをがっかりさせるんですが、これは AMD29K が「素晴らしすぎた」からでもあります。AMD さんの x86 事業は、286 までのいわゆるセカンドソースから、「自分で作らないと駄目」になって、まあそれでも 486 までは Intel さんのマイクロアーキテクチャも 286 の延長ですから、何とかなったのですが、Pentium 対抗で行き詰まってしまいます。お家の一大事、ですから、AMD29K のチームをそのまま x86 チームに改組して、K5 を一口で言えば AMD29050 に x86 命令のデコーダを付加したような CPU として世に出すことになって「本来の AMD29K の開発」には Resource 割けなくなったんですね。やはり木に竹を継いだ、みたいなことはあるし、主として AMD さんの製造技術の問題で、P54C 以降の Pentium にクロックで太刀打ちできなかったから、Am486 と K6 の狭間で「失敗作」という評価になっていると思いますが、K5 以降の AMD さんの設計スタイル (CISC designers who have RISC at heart!) の原点と見ることもできます。
( 8 21 2006, 08:51:39 午前 JST ) Permalink
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