20060209 木曜日 2月 09, 2006

Kyoto Protocol (5)


昨日、運輸部門の二酸化炭素排出が増えている、それもその大半が自家用乗用車、を書きましたが、「こんなに省燃費技術が進んでいるのに」という疑問を頂きましたので、少し掘り下げてみます。まず、運輸部門での増分43百万トンの内訳ですが、「自動車」が 38百万トン (+20.1%)、航空機が 3.9百万トン (+54%) で、船舶・鉄道はほぼ横這い、になっています。自動車の増加の大半が「自家用乗用車」は、これは精密な測定、は不可能なのですが、例えば外挿データとして「日本にある自動車の台数」の推移を見ると 90 -> 03 で乗用車は 32.9百万台から 54.4百万台と 21.5百万台 (+65.4%) も増加しているのに、自動車全体では 58百万台から 76.9百万台と 18.9百万台の増加に過ぎない、即ち「乗用車以外の自動車」はむしろ減少していることからも明らかでしょう。

なぜ、自家用乗用車からの二酸化炭素排出が増えているか、は、最大の理由は「台数が増えているから」なのですが、より突っ込んだ要 因分析をしているおもしろいレポートがありますので紹介しておきます。なお、このレポートは、二酸化炭素排出ではなく、エネルギー消費で見ていますが、輸送のエネルギー消費は、ほぼ石油類の直接消費であり、油種や季節によって若干の差はありますがエネルギー消費と二酸化炭素排出はほぼ正比例します。(家庭やオフィスの電気消費は、石炭火力か原子力か、起源で二酸化炭素排出は全く違うし、輸送でも鉄道は影響を受けるが、自動車、の場合は無視できる)
「省燃費技術が進んでいるのに」エネルギー消費は増える、の要因の一つ目は、
--- 確かに、同一車両重量での理論燃費、は向上している (乗用車全体で 14.4%)
--- しかし同時に、保有平均車両重量も増加している (18%)
ことから、差し引きで、むしろ一台当たりの理論燃費さえ増加している、にあります。端的に言えば、テクノロジーの成果である「燃費の向上」は、ユーザーさんがお金持ちになって大きな高価な車 (大抵の場合、車両重量は増加)に買い換えることで、帳消しどころが、むしろマイナスになっている、が姿です。(90 -> 01 で、「小型乗用車」の保有台数は 10% の減、なのに、「普通乗用車」は 8倍になっている!) このレポートでは、理論燃費以上に実走行燃費が悪化している他の理由、として、道路の混雑が酷くなっている、や、運転が下手になっている、車両重量以外のものの積載の増加 (ルーフキャリアやカーナビ) もあるかも、を言っているのですが、理論燃費はスペック値ですから、これを「よくする」テクニックは進む、しかし、スペックよくなるのと、実用性能が上がるのは別問題、というアリガチな部分も含まれるかも知れません。
とは言え、二酸化炭素排出の増えている最大の要因は、台数が増えていることからドライブされる走行距離の増加、で、「一台当たりの走行距離」は微減傾向とはいえ、走行距離は、ほぼ台数の増加とパラレルに増加しています。このレポートの結論は、自家用自動車のエネルギー消費増加、は 90 -> 01 で、ガソリン換算 36.5百万kl から 59.8百万kl と 64% の増加、寄与度、で言えば、実燃費要因が 5.1百万Kl (22%)、走行距離要因が 18.3百万 Kl (78%) と推計しています。

このレポートは 90 -> 01 という、自動車需要がパジェロ(二代目)やオディッセイのような SUV を中心とする、大きくて重くて燃料を食う車にシフトした時代、の分析であることは割り引いて考える必要があります。自動車メーカはヴィッツを皮切りに「魅力的な小型車」に大きく舵を取っていますし、燃費の向上も、プリウスのように、一気に半減以下、の画期的テクノロジーや、自動アイドリングストップのような仕掛けが実用化されています。平均燃費は累積であり、まだまだデカ車、がぶ飲み車は残っていますから、すぐに 100% 効いて来る訳ではありませんが、もう「燃費効果」が総合すれば排出量増加に作用する、は終わった、燃費効果分として 90 -> 01 で吐き出した 5.1百万kl は取り戻しつつある、と思っています。正の燃費効果、が、走行距離効果を相殺して、前年度比排出量フラットまでは、(累積効果、も大きいので) テクノロジーや「自動車メーカの姿勢」で十分可能と思うし、現実にそういう流れですが、問題はこれから「走行距離要因」がどう推移するか、でしょう。

( 2 09 2006, 10:44:01 午前 JST ) Permalink
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