20061220 水曜日 12月 20, 2006

Molasses


サトウキビとトウモロコシのバイオマスエタノールへの転換効率は、にも諸要素があるのですが、まず、出発点として、非常に単純に、現在の「国際相場」で、原糖とトウモロコシはカロリー当たり等価、と考えてみましょう。その場合、サトウキビから原糖を作る際に副生する、結晶にしにくい糖分を多く含む、廃糖蜜 (Molasses) と呼ばれる成分は、エタノール発酵の原料として利用可能 (ラム酒、は、Molasses から作られるお酒です) であり、サトウキビで利用可能な成分は、製品としての原糖だけではない、が、まず有利です。(廃糖蜜、は、家畜の飼料に添加されたり、発酵用原料として用いられる、例えばいわゆる味の素 = グルタミン酸ソーダ、の多くはモラセスの発酵産物で、文字通りの「廃物」ではないのですが、それは「利用される場所」での価値で、砂糖工場から出て行くところでは、ほぼ「無価値物」に近い) 今でも、過酷な国際市場に出て行くほどの価格競争力はないが、国内消費用に大量の砂糖の生産のある国、例えばインドでは、「廃糖蜜だけを原料にするバイオエタノール工場」が動いていると思います。

またプロセス的に考えても、原糖は、サトウキビの絞り汁 (ケーンジュース) を精製して製造される、当然、ケーンジュースの価値は、糖価マイナス精製費用、なのですが、トウモロコシからの場合は、主成分はデンプンですから、それを加水分解して (化学反応で、か、発酵で、かはありますが) 言ってみれば、一手間掛けてケーンジュースのような砂糖の溶液を作って、そこからエタノール発酵が始まります。かなり乱暴な言い方になりますが、トウモロコシ価格 + 加水分解費用、と、原糖価格 - 精製費用、が、「エタノール発酵の原料価格」になるわけですから、カロリー等価であったとしても、片や加工費が控除され、片や加工費が付加されるところから「エタノール発酵」がスタートする。ここも、エタノール発酵原料としてのサトウキビの大きな優位性、です。

トウモロコシからのバイオマスエタノールのコスト競争力が (ブラジルの)サトウキビからのそれに比較して乏しい、を、米国も認識している、は、ブラジルから輸入されるエタノールに $0.14/l と高額の関税を課していることでも明らかです。いくらなんでも $0.14/l もの Cost 較差が存在しているとは思えませんから、トウモロコシからのバイオマスエタノールの産地である中西部から東部までの運賃と、ブラジルからの運賃の格差 (輸送距離は短いが、タンカーの海上運賃に対して陸送ですから、ブラジルからの方が安くても不思議はない) とかも勘定に入っているのかも知れませんが、とにかく、高い関税障壁を設けても、「国内での (Cost 競争力の乏しい) バイオエタノール生産を守る」という、おおげさに言えば米国の国家意志の現れ、ですね。それだけ、米国にとって、トウモロコシもガソリンも大きい、であり、「本気にならざるを得ない」は、そうなんだと思います。大国である米国が、「本気」になれば、Cost とか原理は関係ない、どうみても「単純な競争力計算」では大きな差のあるバイオマスエタノールの製造で、米国での生産がブラジルを抜いてしまう、は、「簡単な話」であり、無理が通れば道理が引っ込む、の結末とはいえ、Total で「再生可能燃料」への転換が進むのは良いことじゃないか、という好意的な見方もあります。

( 12 20 2006, 08:59:44 午前 JST ) Permalink
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