MTBE
米国でのバイオマスエタノールの需要は、元来は排出ガス浄化のために「自動車用ガソリンには含酸素素材を一定割合で混ぜなければならない」とする規制が発端で、含酸素素材としては従来石油系の合成物である メチル t-ブチルエーテル (MTBE) が主として用いられてきました。ところが、この MTBE が水に溶けて、地下水を汚染する可能性、が指摘されて、MTBE の禁止 -> (同じ含酸素素材である) エタノールへの代替が主に中西部の「トウモロコシ生産州」から広がって行ったこと、が、今世紀に入って、トウモロコシからのバイオマスエタノールの生産が増加した要因です。00年から 04年で、バイオマスエタノールの生産は 617万Kl から 1,291万Kl に増加していますが、MTBE の需要は、1,249万Kl から 687万Kl に減少していて、ほぼ見合いになっているのが、その事情を表しています。ブラジルのような「燃料代替」ではなく「添加剤代替」としての需要、だったんですね。
昨年成立した米国の Energy Policy Act of 2005 と大気浄化法の改正で、エタノールの Position が大きく変わったことは、ご承知の通りです。即ち、エタノールを主とする「再生可能燃料」の使用を義務づけ、従来の含酸素素材の添加要件、に替える、という趣旨ですが、これにより、バイオエタノール燃料への税制面での優遇も制度化され、また、12年までに、ガソリンへのバイオメタノールの使用量は 2,839万 Kl まで拡大されることになります。今までの「添加剤」としての需要 (MTBE + エタノール) は、二千万 Kl 以下で、そこが天井、だったのが、「再生可能燃料」になると、とりあえずその天井がかなり上がるし、その天井は、また上がっていく可能性、が見えて来ているんですね。とりあえずの 2,839万 Kl にしても、微妙な量、で、随分大きくも見えるし、現に色々な意味で大きいのですが、米国の巨大な自動車用ガソリン需要から比べると小さい。エタノールは「含酸素化合物」で、ほぼ純粋な炭化水素 (酸素を含まない) である石油系の燃料と比べると、一部は酸化されていますから、単位あたりのエネルギー (酸化反応でもたらされる)は小さいので、いわゆる「燃費」はどうしても劣ります。エタノール単味の自動車用燃料、が当たり前になれば、それを前提とした燃費の向上技術も出てくるかも知れないので、一概には言えないのですが、現在の技術、で考えれば 2,839万 Kl は、米国のガソリン需要の 5% 程度をカバーするに過ぎません。
2,839万 Kl が「小さくはない」のは、米国でのバイオエタノール生産の主原料である、トウモロコシの生産規模との比較において、です。米国は「世界のトウモロコシ王国」で、生産量は年間三億トン弱 (世界の生産の 40% 強)、輸出量は五千万トン前後 (世界の貿易量の 70% 弱) が大雑把な数字です。これから、効率化、は進んで行くと思いますが、現状では、エタノール 1Kl の生産に投入されるトウモロコシは、2.5トン程度、とされていて、2,800万 Kl はトウモロコシ換算七千万トンですから、世界のトウモロコシの貿易量、にそのまま Hit します。ガソリンの世界では、決して大きくないトウモロコシからのバイオエタノール、は、トウモロコシの世界でのバイオエタノール需要として考えると、半端ではない量ですね。これを、「価格」という面から考えると、トウモロコシからのバイオエタノールには、ガソリン (石油) 市場を動かすほどの量的な迫力はありません。また、ガソリン市況 -> トウモロコシ市況、の方は、今までは「代替燃料」としては現実的な生産費から考えると Pay しようがなくて、政策、で「添加剤」(ないしはその延長)で、使用されていたに過ぎないのですから、Total の需給のベースとしては影響するにしても、市況が響く、ではありえませんでした。ところが、石油 (ガソリン) 市況が高騰して、トウモロコシの (現行の) 国際価格をベースにトウモロコシからのバイオエタノール生産が Pay するようになると、トウモロコシの価格は、「一見」石油市況に連動してもおかしくないように見える、ガソリンの市況、は、トウモロコシの市況を大きく動かす要因になり得ます。
( 12 14 2006, 09:03:41 午前 JST ) Permalink
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