Scaling Theory (5)
スケーリング則による性能向上のドライビングパワーは、トランジスタの寸法縮小 = ゲート酸化膜の厚さの縮小で、スイッチング速度を上げること、ですが、スケーリング則の究極の限界、もこの「厚さ」にあります。
究極中の究極、は、ゲート酸化膜の極限は、膜をつくる分子の「分子としての大きさ」でありそれより薄い膜はできない、です。実際には、分子一個分の厚さでは完全な膜にはなりませんから、限界は三個分、とか四個分とか言われていますが、この限界がプロセスルールで言うと 65nm から 45nm のところで来てしまう。ゲート酸化膜の厚さ、にすると、このレベルになるとそろそろ (厚さとは?も何を計るのか、が出てきますが) サブナノメートルに近づくという(量子? 物性?) 物理的な限界、です。これは、モデルとして分かり易いので、ここのブレークスルーは、各社各様に研究されてきたところです。寸法の縮小、が関わるもう一つの限界としては、最近取りざたされることの多いリーク電流問題、があって (量子) 物理的限界とセットでの解、が求められています。
リーク電流問題、は、門前の小僧が触れるには荷が重いので、気のついたところだけ断片的に申し上げておきます。リーク電流問題は、古典的には不純物や表面の不整から発生するものがあって、これは現在の材料ではほぼ解けていますので、問題にはなっていません。(次の材料、では、問題になる可能性があります)
リーク電流がまず深刻になったのは、電池で駆動するモバイル機器でのサブ・スレショルド・リークと呼ばれる、トランジスタが動作していない時に流れるリーク電流です。待機時に起きるリークなので、スリーピング・リークと呼ばれることもあり、何か夜尿症みたいですが、そこでどんどん電池が減る、は携帯電話なりノート PC では致命的です。このリークは、「しきい値電圧」が低くなればなるほど増加するもので、折角スケーリングによって低電圧での「動作」が可能になって消費電力は (電源電圧の二乗に比例するので) 大幅に低下したのに、その効果をフイにするもの、と言えます。ただ、サーバーの CPU で考えると、動いているとき勝負で、待機時のことまで知らないもんね、と言ってしまえば、影響は小さい (先延ばしできる) とも言えないことはありません。
膜厚とセットで議論される、膜が薄くなったことで直接起きるリーク電流が、トンネル効果による「ゲート (酸化膜) リーク」です。これが、従来はほとんど問題にされてこなかったのは、ある程度の膜厚があれば、トンネル効果によるリークは殆ど起きないし、リークの弊害である消費電力増加は低電圧化で抑制されるので相殺されてきたから、で、多少問題になってきたのが 180nm、大問題になったのは 90nm からです。ゲート酸化膜リークによる電力消費は非常に大きく、しかも膜厚、電圧が一定であれば周波数に比例しますので、周波数を上げるほど大きくなる。周波数の向上、は、神話の部分もありますが、スケーリング則による性能向上の目玉なのに、電力消費の増大、というトレードオフはゲート酸化膜リークでは二重に効いてしまいます。
どちらの電力消費の増加、も、上記で述べたのはトランジスタ一個あたりでの増加、であり、トランジスタ数が増加すれば、更に掛け算で増加することはいうまでもありません。
( 12 16 2005, 11:28:59 午前 JST ) Permalink Comments [4]
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Posted by kt on 12月 16, 2005 at 02:10 午後 JST #
Posted by spade on 12月 16, 2005 at 06:56 午後 JST #
Posted by 栗原 on 12月 16, 2005 at 07:46 午後 JST #
それにしても RTL や Verilog まで開示するって、最近の Sun は OpenSolaris にしても傍からみてもハラハラします(誉め言葉)。
Posted by ef on 12月 16, 2005 at 08:50 午後 JST #