Toilet Paper Panic
「トウモロコシの市況」は、ずっと在庫圧力が大きくて長く低迷していたし、今年は天候が良くて豊作だったこともあって、二ドル台前半、で推移して来たのですが、九月頃から騰勢を強め、一時は四ドルを窺う、十年来の高値水準をつけて、今も三ドル台後半を維持しています。(単位はブッシェル当たりなんですが、このブッシェルがまた摩訶不思議な単位で、米国の「メートル法嫌い」もいい加減にして欲しい...) 相場、ですから、騰がるのに別に理由は要らないんですが、騰がる材料としては、ガソリン市況が有力な材料で、「トウモロコシが $4 超えても、ガソリン代替原料としては (WTI が $60 なら) Pay する」が囃されています。これは、計算すればそうなるとしても、実際、という意味ではバカな話で、じゃあすぐトウモロコシからのバイオエタノールの生産が増えて、そこにトウモロコシの実需が引っ張られるのか、というと、WTI $60 で Pay する、ある程度以上の規模のバイオエタノール・プラントを作ろうとすると、発注してから稼働するまで、まあ Rock を Tape-Out (この記事に関連して、何か書かないの、と「ご要望」頂いたんですが、さすがにまだこれだけの材料ではちょっと無理、ですね。万一期待して居られるといけないので、無理矢理触れておきます) してから実際の System Box が市場にでるまでの期間より早い、とは思えませんから、短期的な需給とは関係ありません。ただ、それでも「騰がるモノは騰がる」、実際には、米国の豊作による値下がりに業を煮やした、(米国の輸出の 1/5 程度の規模、ですが) 世界第二位のトウモロコシ輸出国であるアルゼンチンが輸出規制を発動した、も反騰のきっかけで、それに、「原油相場」で稼いだ人達が WTI はもう面白くないから、で参入した、が大きいんでしょうが、まあ「おもちゃ」になっている、と考えるのがこの間の市況の一番簡単な説明、です。
第一次石油ショック (73年) の世界経済へのダメージが大きかったのは、量的な危機、より「価格危機」で、それも石油価格の値上がりそのものの影響、ではない、むしろそれに触発された、「全般的なインフレ」が与えた影響だ、は、よく言われるところです。日本で有名なのは「トイレットペーパーパニック」ですね。トイレットペーパーは嵩の割に単価の安いモノなので、もともと「在庫」は小さく、しかし、スーパーマーケットの「棚」は、大きく占有していました。それがある日、とある GMS で沢山売れて、棚がスカスカになった、でもすぐには在庫の補充が付かなくて、その「スカスカの棚」が、妙に目立って、何か「量的危機」が目前に、の Reality に結びついてしまった。トイレットペーパーが「本当になくなる」は困りますから、「売っている時に買っておかないと」が消費者心理になる。GMS さんも、棚をスカスカにしておく訳にはいかないので、急遽仕入れを掛けるんですが、「実需」対応なら十分な量でも、「買っておかないと」の「仮需」は膨大ですから、すぐまた売り切れてしまう。その光景が Media に乗ったりすると、「識者」の「実際に足りないわけではない」のコメント付き、ではあるんですが、目の色変えて売り場に群がっている、の方がよほど説得力があって、全国に波及する。「識者」のおっしゃるとおり、実際には足りない訳でもなんでもなくて、通常の流通在庫を大幅に上回る「消費者の押し入れ在庫」が発生しているだけ、なんですが、流通の現場では「量的危機」が生まれてしまう。連想ゲームのような形で、それが、洗剤とか、ついには「食塩」とか、生活必需品であり、かつ日持ちのするもの一般に仮需がどんどん拡大してし まう。「売り惜しみ」は、実際にあったとしても「実需を優先します (仮需には対応できません)」の、ごく真っ当なものが殆どだった筈ですが、タマには悪乗りする人もいる、で、消費者の押し入れ在庫、は「個々の消費者」にとっては、押し入れが満杯になればそこで Panic は終了、でも、一度弾みのついた仮需は次々と波及して、「たかがトイレットペーパー」が、実際の石油の値上がりによる価格変動の範囲を大きく超えた「狂乱物価」の引き金になってしまった、みたいなことです。
「石油の値上がり」は、運輸機関の輸送用燃料の値上がり、など、実際のコスト上昇要因になる、はある程度避けられない。そういう Reasonable な Cost Up に対する「耐性」は、世界経済は十分持っている。しかし「連想」で、別にトウモロコシが実際に足りなくなる訳でもないのに (多少足りなくなっても、それを補う在庫はたっぷりあるのに)、トウモロコシの「相場」が騰がる、や、それが引き金になって、(トウモロコシを「原料」にしている) 畜肉の価格が騰がる、や、他の穀物が騰がる、が起きて、それが Spiral になる、杞憂に過ぎないと思いたいですが、そういう Risk を秘めています。
( 12 15 2006, 08:47:50 午前 JST ) Permalink
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