UltraSPARC T1 はCPUの流れを変えた(連載1) : やっぱり Sun がスキ! やっぱり Sun がスキ!

やっぱり Sun がスキ!

http://blogs.sun.com/yappri/date/20060724 2006年 7月 24日 月曜日

UltraSPARC T1 はCPUの流れを変えた(連載1)


[8 core/CPU]

CPU あたり 8 core というのは業界初(?)であり、最先端を走っている。
これはすごいことである。今後のCPUの流れを変えたといってもよいであろう。
これを語るにはサンのCPUの歴史に触れる必要がある。
サンはマルチCPUに昔からこだわってきた。すでにCPUクロックには限界があり、
それを補うには並列処理しかないということに気がついていた。
いやすでに思い知らされていたといった方が正しいかもしれない。
[BSD から SVR へ]
ある時期、製造技術の問題でCPUクロックをあげることができないことを経験した。
そこで1CPUで無理ならマルチCPUでいくしかないと戦略を大きく変更したのだ。
マルチCPUで性能を上げるためには、プログラムのマルチスレッド化が必要であり、
OS もマルチスレッドに対応する必要性があった。
そのために BSD 系の SunOS から SVR 系の Solaris に移行せざるを得なかったという裏事情がある。
SVR 系の方がマルチスレッド化しやすかったのだ。
コンパイラもマルチスレッドに対応した。
この際、サンは非常に苦労した。出たての Solaris はお世辞にもよいものではなかった。
Patch も頻繁に発行された。
[苦労は報われる]
この苦労が後に実りを見せるのである。苦労を乗り越え、Solaris はマルチスレッドを
効率よく扱うことができるようになっていた。コンパイラ技術も飛躍的に向上し、
プログラムに手を入れることなく、コンパイルオプションだけで自動マルチスレッド化
できるようになった。UltraSPARC を 64CPU搭載した、E10K(通称StarFire)の能力を
十分引き出すことができ、E10K は世界中で爆発的に売れた。
Solaris がマルチCPUに優れたOSといわれる所以はこういった苦労を乗り越えてきたからである。
今でも他のOSに比べ優位性がある。
[CPUクロックの限界]
CPU は集積度をあげ、微細化技術により、動作クロックを上げてきた。
その象徴ともいえる、「ムーアの法則」の限界についてまず述べておかねばならない。
この法則とは次のようなものである。
「半導体チップに集積されるトランジスタの数は約2年ごとに倍増する」
実際、この法則通りにきており、それに伴って指数的にコンピュータの処理能力が向上してきた。
ところがである、昨年(2005)あたりから、インテル系の CPU クロックはぴたりと
上がらなくなってしまった。
実はムーアの法則には限界がある。集積度を上げるためには、より小さなトランジスタを
シリコン上に形成しなければならない。現在は 90nm(ナノ・メータ)テクノロジーが主流である。
これは簡単に言えば、90nm 間隔で配線を作ることができるということである。
次世代として65nmテクノロジーが実用化されていくであろう。
[集積度を上げる理由]
実はCPUクロックを上げるためには、CPUの小型化が不可欠である。
電気の伝達速度にも限界がある。
電気は一秒間に地球を7周半もするが、それが限界でもある。
配線が長いと当然、クロック(電気信号)が到達するまで遅延を生じる。
そのため、クロックを上げるためには、配線を短くして全体を小さくする必要がある。
つまりは集積度を上げなければならない。
集積度を上げることとクロックを上げることは同意語といえる。
[理論上の限界と技術上の限界]
ではどこまでも細かい配線ができるかといえばそうではない。
そこには「理論上の限界」と「技術上の限界」がある。
ご存じのように物質はすべて原子から成り立っている。
その原子の直径はシリコンで約 0.24nm である。
つまり理論上、これ以上細い配線はできないのである。
もっともシリコン原子だけを並べたのでは、半導体とはいえない。
わずかな不純物を混在させることで、半導体として機能するのである。
つまり半導体として機能するためにはある一定以上の太さがなければならないのである。
すでに技術的には90nmまできているので、残りが見えている。
[様々な技術上の問題]
微細にすればするほど、配線の強度という面では不利になる。
配線が細ければ当然、大きな電流を流すことができない。
切れやすくなり、故障が増えることを意味する。
こういった様々な相反する矛盾を技術的に解決しなければならない。
技術面で大きな課題は、やはり微細技術である。
半導体の製造には古典的な写真技術が使われている。
原理としてはちょうど、ネガから写真の焼き増しするのと同じと考えてもらってよい。
シリコン基板上にたくさんの配線写真を焼き増しするのである。
細かくなればなるほど可視光ではエッジがぼやけてしまうため、短い波長の光で
感光させなければならない。現在では紫外線やX線が用いられている。
さらに、製造段階での精度も要求される。
ちょっとした振動さえも不良品につながってしまうのだ。
振動によって配線写真がぶれてしまうのだ。
たとえば半導体工場のそばを車や列車が行き交うだけでも影響してしまう。
製造段階での敵は埃やバクテリアだけではないのだ。
微細にすればするほど、歩留まり(良品の割合)が悪くなる。
[微細配線の副作用]
さらに微細な配線には副作用がある。
配線と配線の間隔が狭くなり、電気信号が干渉してくるのである。
簡単にいえば、配線同士がコンデンサと同じ働きをしてしまう。
電気信号の干渉は誤作動を引き起こし、計算結果が狂う。
干渉は余計な電気も消費し、消費したエネルギーは熱となるのである。
微細になることで、トランジスタの膜が薄くなり、漏れ電流も発生する。
熱の処理を誤るとCPUが暴走する。
このため冷却技術も重要である。
現在のヒートシンク、空冷方式では限界にきている。
車のエンジンが空冷から、水冷に変わったように、コンピュータも変わっていくことであろう。
[神の領域]
クロックアップのための複雑に入り乱れた難問を技術的に解決していくことは
非常に難しいレベルに達している。
一つを改善すれば、2つも3つも問題が発生するといった具合である。
たとえば、消費電流を押さえるために、動作電圧(core電圧)を下げると、トランジスタ
の動作に必要なしきい電圧が不足しはじめ、漏れ電流が増大して結局消費電流が
上がってしまうという具合である。
(デジタルの世界ではトランジスタはスイッチの役目をしている。
テコの原理と似ており、小さな電圧で大きな電流(電圧)を制御する。
ところがあまりにも小さな電圧だと、支えきれずに電流が漏れてしまう。
いくらテコでもあまりにも小さい力では支えきれないのと同じである。)
職人レベルを超えつつあり、神業の領域に達している。
今の技術レベルではクロックアップはもはや限界にきている。
新たなブレークスルー(技術革新)がないかぎり、飛躍的な動作クロックの向上は見込めない。
[UltraSPARC T1 登場]
もちろん、SPARC CPU もクロックアップを行ってきたが、それだけではなく、マルチCPUにも力を注いできた。
その現実解として 8 core という UltraSPARC T1 が登場したのだ。
上記の技術的な背景を知っていると登場すべくして登場したということがわかるであろう。
(次号に続く。)

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